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野球経験ゼロで訪日コーチ研修=3世の沢里デニスさん、栃木県で奮闘中=ノックから、全国紙も注目=「いつか五輪で優勝を」

1月21日(金)

 ブラジル野球界に、日本の指導法などを持ち込もうと、三世の沢里デニス誠さん(27)が祖母の母県である栃木県内で研修を受けている。昨年九月から県内にある高校の野球部などで日本の優れた指導法や選手の育成方法に触れてきた沢里さん。父はブラジル球界の発展に尽力してきたパウリスタ野球連盟会長のオリヴィオ栄志さんだ。これまでにも女子ソフトボールなどのトレーニングコーチとして南米大会にも同行した経験を持つデニスさんは「ブラジルでも野球が文化となるぐらい普及させて、五輪で優勝したい」と意気込みを語る。

 オリヴィオさんは野球に、母由美さんはアテネ五輪体操で審判員を務めるなどスポーツ一家として知られる沢里家。デニスさんも柔道の黒帯を取得し、体育系の大学を卒業した後、カナダ・トロントに留学した経験を持ち、選手らの体調管理などを専門にするトレーニングコーチとして活動してきた。
 父がブラジル球界に関係することもあり、ブラジル代表野球チームや女子ソフトなどに関係はしてきたが、野球経験はゼロ。ただ、ブラジルではまだまだ野球の指導者が少ないことなどから、自ら指導のノウハウを学ぼうと、栃木県人会を通じ「県海外技術研修員受入事業」に応募。昨年九月から小山南高校の野球部で、十二月まで研修を受けてきた。父オリヴィオさんも「日本に留学するとは聞いていたが、まさか野球を学びに行っているとは。ノックもしたことがなかったのに」と驚きを隠さないが、自らと同じ道を歩もうとする息子に喜びを隠さない。
 当初はノックの時にバットにボールを当てることさえ出来なかったが、一ヶ月も立てば上手にこなせるまでに成長。逆に、自らがブラジルで学んだバスケットボールや陸上のブラジル式練習法を制度らに指導し、下半身強化に貢献した。
 伊藤光一監督は「将来はデニスが育てたブラジルのチームと対戦してみたい」と帰国後の活躍に大きな期待を寄せる。
 ブラジルの野球事情について精通するオリヴィオさんは「日本の選手はブラジルと異なり、言われなくても真面目に練習する。どういう経験を持ってくるのか楽しみ。特に日本の緻密さを伝えてくれたら」と話す。
 小山南高校での研修は日本でも大きな注目を集め、朝日新聞や読売新聞など全国紙もデニスさんの奮闘ぶりを取り上げた。一月から約二ヵ月間、県内の施設でリハビリや食事法の研修を受けた後、帰国する予定のデニスさん。
 「日本人は毎日練習する。帰国後は選手に一生懸命やることの大切さを伝えたい」。上達した日本語だけでなく、日本人ならではの精神の一端に触れたことがデニスさんの大きな糧となる。