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農牧研幹部全員を更迭=農相、確執に終止符=農業最先端技術開発へ布石=小農中心は時代遅れ

1月22日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ロベルト・ロドリゲス農相は二十日、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)の幹部全員を更迭し、農務省内の確執に終止符を打った。小農システムを奨励するEMBRAPAのカンパニョーラ前長官は、それを時代に逆行すると考える農相との間で不協和音をかもしていた。さらに同長官がルーラ大統領側近の兼任を画策したので、農相は十一月に進退伺いを提出していた。農相はEMBRAPAを、農業分野の最先端技術研究所と位置付けている。

 ロドリゲス農相は、省内の謀反を鎮圧したようだ。農相に反旗を翻していたEMBRAPAの前長官が、大統領の側近兼任を工作したことで、農相は進退伺いを提出した。同長官の小農を中心とするアグリビジネス構想は、農相の構想とは真っ向から対立するものだった。
 同長官の後任には、物理学者でアグリビジネスの権威シウヴィオ・クレスターナ氏が就任。同氏はPT生え抜きではないが、PT所属で、サンカルロス市のリーマ市長の推薦となっている。更迭された前長官と三人の幹部は、ピラシカバ市のバイオディーゼル研究所へ転属される模様だ。
 農相は、EMBRAPAがブラジル次世代産業の柱となる農業の最先端技術開発を行うという、雄大な構想を大統領に披露した。しかし、時代の流れとことごとく逆行する前長官との不仲で、構想は挫折していた。大統領は農相の全面支持を表明し、構想の実現を約束した。
 アグリビジネスへの小農起用がルーラ政権の宿願であるなら、「飢餓ゼロ計画」で降ろされたグラジアーノ教授を任命するよう農相は提案した。旧友でもある同教授は、党内の空気に馴染めず呻吟している。
 農相の農務省改革は、EMBRAPAだけに止まらない。ブラジルのアグリビジネスの体制強化が、布石されている。さらに農業畜産局や農産奨励局、農産組合局などの長官を交代させた。さらに農産物の海外輸出で期待がかかる農業渉外局や農相直轄の輸出戦略局を新設した。
 農相の抱えるスタッフが大挙首都へ到着し、大統領の辞令を待っている。降格された長官らは、新長官の補佐として継続勤務になるとみられる。新長官は、前任者の画策やいやがらせに負けないで、果敢に計画実行へ挑むよう農相が檄を飛ばした。
 ロドリゲス農相体制は難産であったが、ようやく生まれた。しかし、宿敵のシウヴァ環境相やロセット農地改革相などが健在で、農相との腕相撲は続く。環境相や農地改革相の息がかかった管理職や労組関係者が次々降ろされ、農相のスタッフと交代するようだ。
 クレスターナ新長官の起用は、農務省を既成概念に収まるだけの組織ではなく、農業外務省を併設し通商面を強化したスーパー農務省に変身させる農相構想の一環。新長官はワシントンで長い間、農業特務機関を指揮し、米国の農業技術の情報収集に精通したキャリアがある。新長官が持つ最新情報は、これからのブラジル農業に有益であると農相はみている。