ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 拉致被害者の身元判明=武装勢力が声明発表=政治絡みなら政府も関与へ=寛大な措置を嘆願する家族

拉致被害者の身元判明=武装勢力が声明発表=政治絡みなら政府も関与へ=寛大な措置を嘆願する家族

1月25日(火)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十四日】イラクの武装勢力アル・ムジャヒジンは二十二日、オデブレヒトのマイアミ支社下請け企業勤務のブラジル人技術者ジョアン・J・ヴァスコンセロス・Jr氏(49)を拉致したとの声明を発表した。政府は、イラク武力介入に対し反対の立場を採っていることを表明し、拉致事件の解決に後方支援は行うが、折衝はオデブレヒトに委ねるとした。拉致被害者の家族は、親族が政治問題の犠牲にならないよう犯人らに嘆願している。

 同事件を報道したアル・ジャジーラ放送は、拉致被害者の身分証明書を提示しただけで、本人の状況や要求事項、身代金については一切触れていない。被害者は、エスピリト・サント州出身でリオ市に在住していた。〇四年四月、オデブレヒト米国法人の下請け会社に就職し、現地へ派遣された。
 被害者の家族、妻と子ども二人は現在フロリダ州ジュイス・デ・フォーラ市に在住。被害者の妹のカルラさんは、オデブレヒトからインターネットで事件後の状況について連絡を受けた。同社は武装勢力との折衝に努力しているが、被害者保護のため、交渉内容は公開しないと通知されたという。
 セウソ・アモリン外相は側近を招き、政府が可能な援助範囲を協議した。政府は直ちに武装勢力との交渉ルートを開き、イラクへの武力介入反対の立場を強調するとした。政府はこれまでのところ、テレビで被害者の身分証明書を見ただけで、武装勢力との直接折衝はなく、真相の確認は行っていない。
 政府が外交ルートを通じて事件に関与するなら、オデブレヒトの営業方針を変更させることが前提になる。同社は武装勢力の行動を犯罪集団の犯行と見なし、政府の公式関与をけん制したと外務省はいう。事件が政治絡みの拉致であることが確認されれば、外務省は折衝の指揮を採る考えのようだ。
 カルラさんは報道陣に対し、被害者はオデブレヒトの下請け企業に二十年間勤続し、危険地帯の勤務を常とするため誘拐拉致保険に加入していると述べた。そのため同社は、身代金支払いによる事件の決着を希望している。被害者の兄弟たちは、兄が武力介入とは全く無関係に、イラク復興のため現地へ赴いたとし、寛大な措置を嘆願した。
 遺族の思惑に反してスンニ派のアル・ムジャヒジンは、同派のアンサル・アル・スンナと共同で行った政治目的の拉致であるとの声明を発表した。アル・ムジャヒジンは〇四年四月、日本人三人の拉致も行っている。
 オデブレヒト米国法人の営業活動は、九〇年に始まる。大口契約を次々射止めた同社の派手な活動は、ブラジルでは知られていない。九八年にはブッシュ米大統領の実弟ジェブ・ブッシュ・フロリダ州知事が主催する非営利団体へ、企業では最高の七万ドルをオデブレヒトが寄付し話題をさらった。
 寄付金は合計で百七十七万ドルに達し政治色が強いと、米国民のひんしゅくを買った。さらにフロリダ州では同社が、過小価格で公共工事の入札をいつも落とした。工事の不足分を後日、知事に請求して穴埋めをする八百長入札が、野党から再々指摘されていた。