2月2日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】ブラジルは十年以内に、原種牛大国として世界へ種牛を供給するようになると予測される。各種原種牛の開発では、米国を始めカナダ、オーストラリアが業界の覇を握ろうと競っている。
しかし、オーストラリアは国土のほとんどが砂漠で、牛の飼育頭数に限界がある。米国とカナダは若い青年たちがITの世界へ走り、牧畜に興味を持たないため後継者難で先が見えている。また米加両国では牧畜業に較べてハイテク産業の収入が桁違いに多く、軽作業なのが若者に魅力的なのだ。
父親の跡を継いで牧畜に精を出す青年がブラジルには多く、その点は恵まれている。ブラジルの原種牛開発は、オーストラリアやアフリカ、中南米諸国などの熱帯や亜熱帯地域の牧畜家から注目されている。
ブラジル産牛肉の生産原価は、米国より三〇%割安で、オーストラリアの半分以下。米国農業は人件費高騰で、農業に労働者を雇用できる状態にない。高齢者が細々と就業している例が多く、手抜きが目立つ。衛生問題をクリアすれば、ブラジルは欧米や日本の精肉市場制覇が夢ではない。
牛肉の生産原価は現在、ブラジルの放牧式でアローバ(十五キロ)当たり四十レアル、集中管理方式で五十八レアル。米国は集中管理方式で百から百五十レアル。牧草も栄養価が高く、成長の早い新種が次々と発売される。人件費については、熟練労働者が安価で容易に雇える。気候は最高、牧草は一年中青々と茂っている。
米国がIT、ハイテク産業を採るなら、ブラジルは世界への食糧供給で勝負する。ブラジルの生命工学への投資は見るものがある。人工授精や受精卵の移植、試験官受精、ゲノム計画、クローン開発など世界のトップレベルをリードしている。