ホーム | 日系社会ニュース | コーチ/留学生/遠征は3年連続=ブラジルパワーで躍進=山形県羽黒高 今年もリオで特訓=サッカー王国の空気、刺激に

コーチ/留学生/遠征は3年連続=ブラジルパワーで躍進=山形県羽黒高 今年もリオで特訓=サッカー王国の空気、刺激に

2月2日(水)

 ブラジル人留学生四人を擁し、今年一月の全国高校サッカー選手権大会に初出場した山形県の羽黒高校サッカー部が、ブラジルに滞在している。留学生がかつて所属したリオデジャネイロのジーコフッチボールセンター(CFZ)で技術指導を受けたり、有名クラブの下部組織などと試合を行ったりするだけでなく、ブラジル社会を見ることで人間的な幅を広げてもらうのが目的。同校で指導にあたるフィジカルコーチのジェロニモ・ヴァスケスさんは「ここでの経験は大きい。次の目標は全国優勝」と夢を膨らませる。
 進学校ながら、野球とサッカーの活動に力を入れる同校。二〇〇〇年に日系人留学生を野球部に送り出すのに貢献した山形県人会副会長の国井精・聖西日本語教育連合会名誉会長が、サッカー部への留学生送りだしにも関わった。
 日本側で大きな役割を果たすのがジェロニモさんだ。九六年に山形県スポーツ交流員として渡日したジェロニモさんは、プロ選手を目指した経験も持ち、リオのガマ・フィーリョ大学でフィジカルコーチについて学んだ。フラメンゴやフルミネンセなどリオの名門クラブでも「裏方」として働いた実績を持つ。九九年にはJリーグ二部のモンテビデオ山形でもフィジカルコーチを務め、〇一年から同校に勤務している。
 「ブラジルのようにきっちりとつなぎ、ボールを大切にするサッカーを目指している」とジェロニモさん。本街直樹監督のもと、二〇〇〇年からサッカー部の強化を目指す同校で大きな武器となるのがブラジル人留学生だ。非日系の選手が多いだけに、言葉や文化などの適応が課題となるが、彼らのよき相談役がジェロニモさんだ。
 「冬は寒いし、環境はリオと違うし、何度も帰りたくて泣いた経験が僕にもある。彼らの気持ちは分かりますよ」。
 高校サッカー界最高峰の大会となる選手権には〇二、〇三年とも決勝で涙を飲んだが〇四年には初めて県優勝。今年一月の大会では、初出場ながら見事二勝を挙げる活躍を見せた。
 この季節、山形県ではグラウンドに一メートルを超える積雪があり、室内練習を余儀なくされることから三年連続でブラジル遠征を企画。一月十八日に到着した後、リオのCFZでは練習試合に二戦二勝するなど「王国」の空気に触れながら、刺激を受けている。次期主将の二年生中島弘行さん(17)は「サッカーだけでなく、いろんなものを見られて人間的に成長できる」と話す。
 ブラジルでの滞在中に世話をする国井さんは同校から招待を受け、選手権大会で活躍する選手たちの勇姿を国立競技場の観客席から見守った。「こうした交流事業を続けることでブラジルに興味と親近感を持つ若者が日本に増える。サッカーを通じて立派な若者を育てたい」と国井さん。
 三年生が卒業した後もマーロンとドウグラスの二人のブラジル人留学生が残るだけに、さらなる飛躍が期待できる羽黒。日系人留学生三人が主力となって春の甲子園に初出場する野球部同様、サッカー部でも「ブラジルパワー」が牽引する。