コラム
ブラジルで数十年暮らしたら、つぎのような「ブラジル人のしたたかさ」を身につけたいと思うのだが…。
夕刻、地下鉄サンジョアキン駅構内出入り口。かなり強い雨が降っている。鼻下に立派なヒゲを蓄えたスーツ姿の六十歳前後の紳士が、側の貧しげな幼女連れの女性に、
ヒゲ「傘を買ってあげる。好きなのを選びなさい」。
女性が嬉しそうに若い男性の傘売りが持つ一本(五レアル)を選んだ。
ヒゲ(傘売りに)「私もほしい。二本を五レアルにしなさい」。
傘売り「ノン」。
ヒゲ「ダメか」。
傘売り「ダメだ」。
ヒゲがにわかに、まわりに大声を出し始めた。 ヒゲ(何回も)「傘二本で、五レアルだョ」。
傘売りはたまりかねて、雨の中を外に出た。ヒゲは、女性に〃釈明〃をしなかった。 (神)
05/2/5