農業補助金に大なた=ブッシュ大統領=財政赤字削減で=歓迎するブラジル貿易関係者=ドーハ・ラウンドも進展か
2月8日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】米国のブッシュ大統領は五日、同国の財政赤字削減のため農業補助金を大幅に減額することを盛り込んだ、二〇〇六年度予算案を発表した。こう着状態にあった米州自由貿易圏(FTAA)交渉にようやく明るい曙光が差し込んだとして、ブラジル国際貿易研究所(ICONE)は新しい米政府の動きを歓迎している。米議会の貿易自由化擁護派は、前向きな流れが始まったことで大きな前進を期待している。
ニューヨーク・タイムズ紙は六日、米大統領が農業補助金の大幅削減を決断したことを報じた。政治的影響力が最も強い農業団体の取り込みは、米大統領選勝利の鍵だったが、現在政府は財政赤字の削減に取り組まざるを得なくなった。
ブッシュ大統領の地元である米国南部では、米作や綿作の農業団体が絶大な勢力を持っている。また、農業補助金の大部分を同地域が享受していた。
第二期ブッシュ政権は、五千億ドルに及ぶ財政赤字が米経済の健全性を著しく損なうと指摘された。歳出は軍事費とテロ対策費が止まるところを知らず、赤字削減への取り組みは急務となっていた。
七日に議会へ提出される〇六年度予算案は、総額二兆五千億ドルから成る。農業補助金はこれまで、年間百六十億ドルを全生産者数の一〇%を占める大規模農業生産者に支払っていた。それを総額二十五万ドルにカットした。
ICONEのサワヤ・ジャンク代表は、大統領発言を前向きの動きと歓迎した。米国の行政府と立法府の間で、同問題を巡って激論が交わされると予想される。米国の農業生産者への国の保証が大幅に制限されたことで、議会のロビー活動も変革を迫られる。世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドで農業補助金をめぐる交渉も大きく進展すると同代表はみている。
WTO裁決が出れば、EUも農業補助金の七〇%カットに踏み切る可能性がある。ドーハ・ラウンドの進展は米国の補助金削減にかかっている。しかし、これまでの情勢とは異なり、米議会でも市場開放派に有利な風向きだ。
大統領は記者団に、農業者団体との板挟みにあることを告白した。米国の農業補助金制度は、九〇%を占める小農には恩恵が行き渡らない制度で各方面からの批判が多かった。
米国は〇五年に食糧輸入国になりそうだ。米国農業は近年、ファーム・ビル法による政府援助で国際競争力や生産性が急速に衰えた。殊にコモディティ(必需品)は、途上国に遅れを取った。これは米国のみならず、日本やEUでも同様の問題が起きている。
米国の双子の赤字対策は、WTOが進める関税引き下げ交渉にも影響を与え、ブラジルが音頭を取るG20(途上国連合)にも有利に働きそうだ。関税引き下げが実現すると、途上国からの農産物輸出は四〇%の増加が見込まれ、国内市場も品薄による価格調整があると予想される。
ブラジル代表団は、〇五年の農産物の貿易自由化でジュネーブのWTO本部を訪れた。年末に開催されるWTO香港会議までに、決着を付ける意気込みだ。