2月10日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】アメリカのブッシュ大統領は施政方針として、不法滞在者も含めた外国人に短期就労ビザを発行する措置を定めた法案を上院に上程することを明らかにした。アメリカには現在八百万人から一千万人の不法滞在者がいると言われており、彼らには朗報となる。外務省によると、ブラジル人は合法滞在も含め八十万人がアメリカで生活している。
ブッシュ大統領は、現在不法滞在者はアメリカ人が嫌う職業に就いており、合法化することによりこの種の雇用が拡大し、経済効果が大きいとしている。また入国者の身許や勤務先を登録することで、国境パトロール隊や空港、港湾の入国管理局は麻薬とテロのチェックに専念できる点を強調した。
これに対し野党は、長年かけてグリーンカード(市民権)を入手して入国し、まだ入手を待っている人々に対して不公平だと反発している。しかし与党側は上院で承認される公算が強いと楽観視している。
不法滞在者の就労先はホテル、レストラン、観光業、建築業、家政婦、農業などのいわゆる下働きで、雇い主も入手不足から不法就労で摘発されるリスクを背負ってでも雇わざるを得ないのが現状で、合法化はこれらにメリットがあるものと指摘している。あるレストランの店主は皿洗いやウエイトレスを募集してもアメリカ人は一人として応募してこないと証言している。
ブラジル外務省はこれに対し、今回の措置は約一千万人と言われるメキシコやカリブ諸国を対象としたもので、ブラジル人は適用外だとの認識を示した。ブラジル人はテロの心配もなく、勤勉で他の外国人のように犯罪をおこすのは極めてまれで、アメリカ当局も承知しており、合法入国に支障がないとしている。しかし、これとは裏腹にアメリカ領事館の査証は厳しく、故に不法入国が絶えないのは衆知の事実だ。現に兄弟が住むアメリカに遊びに行こうとした年金生活者が、所持金が少ないという理由で査証発行を拒否された例がある。
ミナス州のゴベルナドル・ヴァラダレス市は人口二十五万人だが、そのうち四万人がアメリカに行っている、ほとんどが密入国だ。市の働き手の中堅がいなくなり市の財政が心配されたが、彼らの送金で市は潤っている。四十九歳の女性はアメリカで十年間子守りとして働き(もちろん不法滞在)帰国した後、市内に自宅と農園を購入、近い内に小売店を開業するという。
ブラジル人は英語の覚えも早く、雇い主の信頼が厚いとのこと。しかし私生活では常に不法滞在の摘発におびえ、犯罪の被害にあっても届け出ができずに泣き寝入りせねばならず、生活の保障は何一つないと述懐している。