2月15日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日、十四日】パラー州アナプ市で十二日、アメリカ人でブラジルに帰化した宣教師が射殺された。宣教師は四十年間、アマゾン地区の農民保護のための農地改革や環境保全とくに森林伐採反対運動の急先鋒となっていた。
警察によると、目撃者の証言などから殺害犯人は二人組のいわゆる「殺し屋」で、背後で農場主あるいは森林伐採業者が指図したと見て追及している。事件は国内にとどまらず世界中で反響を呼び、宗教団体を始めとして人権擁護団体、グリーンピースなどの環境保全団体などが遺憾の意を表するとともに、ブラジル当局に対する抗議を表明している。ルーラ大統領も事を重視し、関係閣僚や関係者、連邦警察を現地に派遣し、事件の早期解決と今後の対応を指示した。
パラー州都ベレン市から五百キロのアナプ市から五十キロの林道で、ドロシー・スタング宣教師(七三)がピストルで九発撃たれて殺害された。警察は捜査と目撃者の証言から、二人組の「殺し屋」と殺害仲介を専門とする男の計三人を犯人と断定、逮捕状を取り、行方を追っている。アマゾン横断道路の要所に検問所を設け、大がかりな捜査を展開している。
宣教師はアマゾン地区に着伯以来四十年間、運動を展開し、ブラジルに骨を埋める覚悟で帰化した。イタリアのローマ教会の資金援助をもとに農民の生活改善に努めた。このため農民からは「森の中のサンタ」と呼ばれ親しまれたが、いっぽうで農場主や森林伐採業者からは敵視されてきた。
いやがらせや脅迫は日常茶飯事だったが、二〇〇一年に死の脅迫状が届いたことから、宣教師は当局に被害届を出した。ところが、当局は逆に武器取扱法違反の疑いで取調べを行った。日頃から敵が武力を行使したら、自衛のために武器を持って立ち上がると公言していたため疑いを持たれたため。
この時から宣教師は警察を頼りにせず、「逃げも隠れもしない。脅迫には屈しない」と毅然とした態度を取り続けてきた。また友人に宛てたEメールで「私の首に一万レアルの懸賞金がかかっているようだけど、私にそんな価値があるのかしら」と冗談を言ったという。
宣教師は昨年十二月、全国弁護士協会から勲章を受け、その授与式が上院議会で行われた。また同時に、パラー州ベレン市の名誉市民権も授与された。今回の事件は一九八八年にアマゾン地区で発生した、当時環境保全推進リーダーだったシッコ・メンデス氏殺害事件の二の舞いで、当局の対応に非難の声が沸き上がっている。