2月15日(火)
日語校が激減した理由としては、教師の成り手がいないことが真っ先に指摘された。
「文協が学校を経営しても文協は自治組織のため、教師の給料は安い上、何の保証もない」と汎パウリスタ日本語普及会部長の沢木茂さん(75)は教師の待遇の悪さを指摘する。
JICAシニアボランティアの井上由己子さん(62)は「日語教育の重要性をみんなが理解し、少しずつでも寄付を持ち寄ることが必要。生徒の月謝で給料を払っているようでは駄目」と、日語校関係者の意識改革を訴える。
しかし、待遇面での問題が解決したとしても、「日本語ができるだけでは教師はできない」(打田麗子さん・53・三世、アウバレス・マッシャード校)という問題が横たわる。
現在でもそうだが、日本語ができるというだけで教師になった人は多い。しかし、今は外国語としての日本語教育が求められる時代。「昨日まで主婦だったような人が、給料も安いのに、教師を続け、技術を身に付けるのは大変。その気力が持たない」とソロカバナ日本語普及会会長の橿本洋子さん(62)。
教師が少なくなった結果として、ほとんどの教師が一人で二十人前後の生徒を抱えることになった。確たるマニュアルがない上、授業は複式で行われるため効率の低下はいなめない。それが生徒の減少にも繋がっている。
ノロエステ日本語普及会会長の末長建郎さん(60)は「先生の実力次第で問題は解決する」と言う。教師の実力が上がれば生徒も増えるからだ。親の日語教育への関心が低いことに加え、授業が非効率で興味の湧かないものだったら、生徒が教室から消えていくのは当然だ。「改善すればすれば高い月謝をとったとしても、保護者にその支払い能力がある限り大丈夫」
しかし、教師が個人的能力を高めても、それがほかに普及し引き継がれなければあまり意味がない。
実際、「海外には百年の歴史を持つ日本語教育が存在する。しかし、蓄積されたものが何もない」と指摘する日本の大学教授がいるように、今まではマニュアルと呼べるようなものが形成されてこなかった。加えて、日語教育は現在、過渡期の真っ只中にある。
ブラジル日本語センターの松酒早苗講師(36・二世)も「複式授業の中でどのように授業を進めるかは研究、マニュアル作りが必要」と指摘している。
合同研修会で富山県高岡市から派遣されている角谷壮積さんは、八年かけて一通り教えるカリキュラムを提案した。成績表を作ることで各生徒が現在どのようなレベルにあるのかを識別する。角谷さんの次に来る教師にも、各生徒に対し何を教えるべきかが分かる。
このように、現在、日語教育は日本から派遣されてきたシニアボランティアや若者に負うところが大きい。しかし、教師の多くは依然として一世や、日語能力の高い高齢の二世、三世で、彼らの存在が日語教育を支えているといっても過言ではない。彼らがまだ活躍している今がマニュアル作りの最後のチャンスと言えるのではないだろうか。
(つづく、米倉達也記者)