2月18日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】サンパウロ市内で昨年、一日平均三人以上が交通事故で尊い命を失った。これまで新道路交通法により交通事故は年々減少傾向をたどってきたが、昨年の死亡率は一昨年と比べ四・六%上昇し、再び増加に転じた。なかでも車にはねられて犠牲となった歩行者が最も多く、次いでオートバイ運転手の事故死となっている。事故の原因のほとんどは飲酒運転とスピードの出し過ぎで、オートバイの場合は車の間を縫いながらハイスピードで走り抜けようとして接触、転倒したりガードレールに衝突するケースが多い。当局は事故防止の対策を迫られている。
サンパウロ市交通局が十二日発表したところによると、昨年の交通事故による死者数は一千三百五十五人で一昨年の一千二百六十六人の四・六%増だった。これにより一日平均三人以上が交通事故で死亡していることになる。
当局によると、この数字は即死あるいは病院に収容されて死亡したもので、数日間入院した挙げ句に死亡したケースは含まれていないという。これらを総合すると死亡率は二五%増加するとの見方を示している。
このうち最も多い犠牲者は、はねられた歩行者で五百四十九人と、一昨年より九十一人多かった。次いでオートバイの運転手で四百七人と一昨年より二人増加した。
当局によると事故の原因は、道路工事など交通網の整備の欠如もあるが、ほとんどが運転手の飲酒運転、スピードの出し過ぎや不注意な運転によるものだと指摘している。不注意な運転の原因には三つの要素があり、一つ目は運転能力に欠ける運転手で、いわゆるペーパードライバーやサンデードライバーといった下手な運転をする人。もしくは運転マナーを身につけていない運転手。二つ目は車の点検をおろそかにしている所有者。運転中にエンジンなどのトラブルが発生して事故を招く。三つ目は道順を良く調べずにぶっつけ本番で運転する人。道に迷って一方通行を逆行したり、交差点を徐行しないで突っ切ったりして事故となる。
さらに当局ではマナーを改善するために、小学校から大学まで一貫して授業の正課として盛り込み、道路道徳を浸透させたいとの意向を示している。また免許切り換え時に、心理テストを行って運転能力の是非を検査する案も出ている。
これに対し交通事故遺族協会は、州や市当局にも責任の一端はあるとし、幹線道路や大通りの整備はするが、一歩外れた街路や郊外の道路はおざなりにされていると指摘する。また飲酒運転を取り締まるため、風船によるアルコール度検出の検査を推進する運動を展開する意向を示している。この検査は試験的に実施されたことはあるが、ブラジルが個人の権利を擁護する国際協定に加盟したことにより、強要できなくなったことで廃止された経緯がある。
オートバイについては、自家用車の増加で渋滞が悪化、愛用者が急増していることから今後も事故は増加傾向にあるとみられている。オートバイは車の間を我が物顔で走行することから、自動車の運転手から不評を買っている。オートバイ自身の事故ならともかく、これを避けるための急ブレーキで事故が連鎖的に発生しており、取締りを求める声が強まっている。
実は一九九七年に新道路交通法が発令される時に、オートバイの走行を規制した条項(車の間を走行するのを禁止したのを含め)が盛り込まれていたが、オートバイの機動性が失われるという理由で、発令時に削除された背景がある。この条項の復活を求める声が強まっている。
前出の遺族協会は、二輪車であれ四輪車であれ、車線内を走るのが当然で、車線の仕切線上をオートバイが走行しても良いというのは世界広しと言えどもブラジルだけで、笑止の沙汰だと非難している。