2月22日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】米宣教師ドロシー・スタング師の殺人犯フォゴイオことライフラン・N・サーレスは二十日、アナプ市パウ・フラードの知人宅に潜伏中、巡回中の陸軍特殊部隊に拘束され、パラー署で犯行を自供、逮捕された。犯人は、副市長候補の落選者から殺害を依頼されたと自供した。殺害教唆の容疑者アマイール・クーニャに続き、同件で二人目の逮捕。クーニャは、犯罪を計画したとみられる地主モウラ氏の右腕だった。
一村民がテレビでフォゴイオのモンタージュ写真を見て、町で出会った巡回中の兵士に通告、犯人拘束につながった。犯人は二十一日、アウタミーラ警察署へ連行され尋問を受ける。パラー州保安局は、もう一人の犯人ウイルケラノ・ピントをも追跡中。
アウタミーラ市では州保安局と連邦警察が、尋問に立ち会った。先に逮捕されたクーニャは、黙秘権を行使していたが誘導尋問にかかり、モウラ氏の殺人教唆まで自供した。さらにサーレスとピントは、同農場の労働者であったことも自供。クーニャは殺人依頼者と実行犯の仲介役だったと、同保安局はみている。
モウラ氏とクーニャは、同地方で私兵を雇い、農地の略奪や強引な取得を働く常習犯だった。同氏は政治力で、略奪した農地の取得手続きを合法化していた。クーニャは、出身地のエスピリト・サント州で積み荷強盗の前科がある。懲役の判決を受けた後、公共奉仕で釈放されていた。
パラー州で殺人リストに記載され、生命を狙われた農業生産者組合の指導者たちは、いま同地方の社会改革が行われないなら、犠牲者の報道が紙面を賑わすだけと訴えた。組合指導者が戸口や町中で最期を遂げたニュースは、枚挙に暇がない。幼児を残したまま犠牲となった女性指導者もいる。
パラー州ロンドン地方には大地主が集まって結成した犯罪組織が六組あると、同組合連合の会長が訴えた。現在侵入の脅威にさらされているのは、三百世帯が就労する農場で、その農場の地主の自宅には脅迫電話が再々かかる。農場には黒いガラスの乗用車が、ウロウロ徘徊する始末。
不法伐採の通告を受け殺人リストに記載された四十五人について、人権擁護局はミランダ長官の指揮のもと、各人の実態調査を始めた。係官らは二十一日、ベレンに到着。五班に別れ、現地入りする。
これまで闇から闇に葬られていた土地係争と不法伐採に絡むパラー州の殺人事件に、米宣教師の犠牲でようやく日が当たりそうだ。パラー州南部の無法地帯に、陸軍も活動を開始した。医師不在のため開店休業状態だったアナプ市の病院で、活動を行う。
陸軍の軍医部隊は外科医や婦人科医、小児科医、内科医、歯科医、薬剤師、看護師を伴い、同地方在住の住民四万人に無料健康診断や歯科治療を行うらしい。陸軍病院の他に、ヘリ三機と重武装の陸軍部隊百十人が野営している。宣教師殺害の容疑者を一網打尽に捕らえて、ベレンへ護送するという。