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「総意固める前に」発表=日伯総合センター計画 主要伯字紙が大きく扱う=「円満決定の印象」反発も

2月22日(火)

 この週末、主要伯字紙二紙が各半ページ以上の扱いで、ヴィラ・レオポルジーナ区の日伯総合センターのことを大々的に報道した。二十一日晩にサンパウロ市議会内で日本移民百周年委員会が設立されることを受け、写真付きで盛大に発表された。これに対し、年初に二週間以内に再考を催す会議を開催するよう申し入れていたブラジル日本都道府県人会連合会の中沢宏一会長は、「話し合いに関して、まったく何の連絡もないうちに、こんな発表をブラジル社会にするのはおかしい」と反発している。
 建築家の大竹ルイ氏の談話を中心にまとめたフォーリャ紙十九日付けで、日伯総合センター構想のインコルポラドーラ、サンドリア社のヴィクトル・サンドリ氏は「進行状況はほぼ固まっている。月末になれば、さらに詳しい説明ができる」と語っている。
 上原幸啓祭典協会理事長、吉岡黎明文協副会長、渡部和夫顧問らが勢ぞろいでコメントを載せるエスタード紙二十日付けには、「チャンスは逃さない。昨年公式訪伯した小泉首相もこのアイデアを知っていた。次の番はルーラ大統領訪日だ」などの記述があり、両紙とも〃好意的〃な論調となっている。
 伯字紙を併読する本紙読者からは、「まるでコロニア大賛成で円満に決定済みで資金も十分、という間違った印象をブラジル社会に与えかねない内容になっている」と警告する電話が寄せられた。
 県連は昨年十二月の臨時代表者会議で、祭典協会に対し日伯総合センターの再検討を求める決議をした。これを受け、中沢会長は「コロニアの総意を固めるためには、一度きっちり話し合いをする必要がある」と祭典協会に所属する理事長と副理事長三十二人を招集した会合を、二週間以内に開催することを求める一月五日付けの文書を、六日渡した。(本紙一月六日付け既報)
 それに対し、吉岡プロジェクト委員長は、開催日時は未定ながら、中沢会長に対し「上原理事長が理事会を開くと言っている」と回答した。(本紙一月十三日付け既報)
 二十一日午前、中沢会長は「話し合いの申し込みに対して、もう一カ月半もたつのに連絡がない。異常ですよ」と不満げに語った。「いろいろな人に協力を依頼するなら、公にする前に、ちゃんと話合いが必要なんじゃないですか」と今回の記事に首をかしげる。
 「日本移民の百周年なんだから、市や州に行く前に、日系社会をかっちり固めるのも大切なはず。市や州を利用して、自分たちを正当化するのはおかしい」と語った。
 一方、「県連からの申し出はどうなったのか」との質問に、吉岡プロジェクト委員長は二十一日午前、「日系社会の方は反対ばっかり。県連の態度はおかしい。だって、総会で承認されたのに、今になってあーだ、こーだ言うことない。そんなことをしていたら、すぐに〇八年になってしまう」との考えを述べた。
 昨年の小泉首相来伯の直前、九月にサンパウロ州議会内にアウキミン州知事が主導して、百周年委員会が設立された。それに続き、二十一日晩、サンパウロ市議会でも設立式典がある。
 吉岡委員長によれば今月三日に、上原理事長と渡部補佐がブラジリアへ行き、ルーラ大統領五月訪日に向け、百周年記念事業への協力要請を外務省アジア太平洋局長の藤田エジムンド氏にしたという。
 日系社会の信頼を盾に、ブラジル社会へのお披露目と交渉を着々と進める百周年祭典協会。主役たる日系社会は、置き去りにされたままでいいのだろうか。

 【記者の目】
 宝石協会構想とのギャップ
 

ちょうど三年前の二月十四日、現在、日本移民百周年記念事業「日伯総合センター」が予定されているサンパウロ市ヴィラ・レオポルジーナ区の同じ土地を使った別の計画、ゴールド・センター(黄金センター)に関する記事がフォーリャ・デ・サンパウロ紙に掲載された。
 二棟のタワービルにコンベンション・センター、展示場、約四百室のホテル、千八百席の劇場という複合商業施設構想で、現在の日伯総合センターと瓜二つだ。総工費は一億五千万レアルだった。
 この構想を作ったのは貴金属宝石ブラジル協会(IBGM)と、同協会がこの開発のために作ったブラジル・コンベンソンイスという団体だ。
 同記事によれば、IBGMは二十年前から宝石時計産業展示会(Fninjer)を、ホテルなどを会場に年に二回ずつ開催している。〇二年二月にはサンパウロ市トランスアメリカ・ホテルで行い、保安上の理由でまったく宣伝をしなかったにも関わらず、たった四日間で一億レアルの売買を成立させた。
 この展示会一回を準備するのに二百万レアルを必要とした。これは文協の年間予算百八十万に匹敵する額であり、それをたった四日間に投資する。富裕層向けの特別な商品だけに、団体の資金力も日系団体とはケタ違いのようだ。
 単価の高い商品を展示するだけに、保安上の経費が莫大にかかる。そのため独自の展示場を自前で建設することが、この計画の発端だった。
 アジェンシア・セブラエが今月三日付けで発表した記事によれば、〇四年の宝石類輸出額は七億ドルと絶好調で、拡大の一途にある。IBGMとしては〇六年までに十億ドルの大台を越えることを目標としている。
 つまり、右肩上がりの鼻息荒い業界がこの計画のバックにある。
 赤字解消を目標に掲げて〃改革〃中の文協。そして、自前では文協内の引越し費用すら捻出できず、文協婦人部にお茶会を開いてもらって、ようやく移転した百周年祭典協会事務局。〃黄金センター〃をベースにした華やかな同構想とは、あまりにギャップが激しいとは言えないだろうか。
 超がつくほど裕福な宝石協会が作った計画に、資金力はないが信用はある日系団体が参加することの意味は何か。     (深)