小さい頃から映画監督に憧れている。アカデミー賞授賞式が近いこの時期になると、赤いじゅうたんの上を歩く夢を一度ならずみてしまう。
でも年々遠くなるなぁハリウッド……。日曜日の朝も、誇大妄想から覚めつくねんとしていた。そんなとき、妻が買ってきたフォーリャ紙の記事が目に留まった。
ミナス州サンフランシスコ河沿い、小さな町の少年はいう。「ボクの周りに、映画館に行った経験のある人はいません。怖がっている人もいます。画面に飲み込まれるんじゃないかって」
だが少年の瞳はいま輝いている。記事によると、同河沿い二十六カ所の広場などに、スクリーンが仮設される(七月~八月)。フィルムは船で運ぶ。船名は映画の父にちなみ、リュミエール。
映画との幸福な出会いを演出するこの発想センスこそ、オスカーに値すると思った。 (大)
05/2/22