2月23日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】地球温暖化防止のため一九九七年に採択された京都議定書が十六日、発効となった。二〇一二年までに先進国は温暖化の原因と考えられる二酸化炭素を五%低減することを主な内容とする協定だ。九〇年以降、先進国が排出した二酸化炭素の量は千三百七十二万トン。主な大量排出国は米国の三六・一%をトップにロシアの一七・四%、日本の八・五%などとなっている。地球温暖化は熱波や竜巻、台風など、数々の異常気象を引き起こすと予測されている。
途上国ブラジルは、二酸化炭素削減に立地条件を生かして協力できる立場にある。地球温暖化防止にシフトしたエコビジネスが、新しいブラジルの産業として注目を引いている。
京都議定書は、温暖化の原因となる排気ガスとして六種を取り上げた。工場排出のダイオキシンと石油燃料の排気ガス、メタンガス、埋立地の排出ガス、窒素酸化物、各種塩素酸化物、その他の工場排出物。
ブラジルは広い森林を有することで、先進国が排出する二酸化炭素を吸収する膨大なクレジットがある。関係機関は一定面積の森林が吸収する二酸化炭素の数量産出法を研究している。これが、エコビジネスの基本になる。
チエテ川流域を幅三十メートル長さ五千キロメートルにわたり植林し、十か所に計数器を設置する。これを基に、アマゾン熱帯雨林や海岸山脈の森林地帯の二酸化炭素吸収量を計算する。二酸化炭素を排出する産業は、ブラジルが代替するというビジネス。
ここから数々のエコビジネスが生まれる。関係機関は、植林や二酸化炭素排出権、二酸化炭素排出の代替産業などへの投資者を募る。自然林と植林の二酸化炭素の吸収量は異なるらしいが、それでもブラジルにはアマゾン熱帯雨林と海岸山脈がある。
産業廃棄物(以下産廃)処理場が、バンデイランテス道三十三キロ地点から五キロの奥まった所で、サンパウロ市や地方都市から持ち込んだ産廃を処理している。深く掘ったたて穴に産廃を投じて埋め立て、諸所にブロックの抜け穴を設置し煙突を立てメタンガスを燃やす。
現在は未利用のガス燃焼熱で、ベルギー系の企業が火力発電所を建設する計画がある。産廃処理はフランス系のゴミ回収会社VEGAが経営し、今後ヨーロッパの産廃も取り扱う計画だ。
リオ州イグアス市で立ち上げた産廃処理とメタンガスを利用する火力発電所建設プロジェクトは、市の許可を得たパウリスタ社がオランダ政府に一千万ドルで売却した。
ブラジルが他の国より有利な点として、アルコール計画で三十年のバイオ技術蓄積があること、手続きが簡素なこと、植林でも経験が深いことなどがある。またブラジルの先物市場で、二酸化炭素排出権が取引されているのも有利だ。
EUは四月から一時間当り三十メガワット以上の電気を消費するEU内企業から、二酸化炭素一トンにつき四十ユーロを徴収する。EU内企業では二酸化炭素排出権の取引に拍車が掛かるとみられる。
世界銀行は、二酸化炭素排出権の買収に乗り出した。二酸化炭素排出権取引には当然闇市場が登場すると思われる。EUではすでに、ブローカーが暗躍している。ブラジルは二酸化炭素排出権取引に関する法整備が行われていないため、混乱が予想される。