3月1日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十八日】労働組合と企業家、弁護士、裁判所の間で長年問題となっていた懸案を解決するため、政府は三月二日、労組改革案を議会へ上程することになった。一九八八年以来政府の労組への介入は禁じられていたが、政府は認可した労組のみを存続させる意向のようだ。労組は政府が認めた組合税のみを徴収し、それ以外の組合費徴収を禁じる。同改革案は労働市場の活性化で前進を認めるものの、数々の欠陥も指摘されている。
現行の統一労働法が時代遅れとして、ブラジルの労働市場は今一つと世界から批判されていた。政府が上程する労組改革案は、労働組合を政府の管理下に置くというもの。上程案が原案通りに通過するならば、労組の生殺与奪の権を政府が握ることになる。
八八年の連邦令制定以来、労組は野に放たれた野獣となっていた。組合は業種別代表が一人いれば誰でも設立が可能で、独立運営する権限も与えられた。これからは、それが政府認可の御用組合のみとなる。組合員数や職階、業種、定款内容も限定される。
労働組合として認めるかどうかの判断は労働省の一存となるなど、同改革案は思い切った内容で、いわば、三〇年代のジェトゥリオ・ヴァルガス独裁政権を彷彿させるといえる。改革案が設置を予定している国家労働審議会(CNRT)は、労組の設立を許可した軍政時代の労組委員会の復活といえそうだ。
労・使・官からなる労働フォーラムは、労働問題解決の大御所となる。それぞれの代表はCNRTが息のかかった人物を人選し、官製フォーラムとなる可能性がある。CNRTは半官半民の団体で、今後の労働組合のひな型を作る。従来の労働組合は、最高幹部と組合の下部機構が切り離される。
改革案の中の労組とは、政府と労組最高幹部の間で合意した官製組合であると組合員らが批判した。労組最高幹部らは政府と共同歩調で、改革案の審議に向け議会との折衝に入る。
改革案の中で企業家側が強く抵抗したのは、生産の場を労使交渉の場とする点だった。労働者側は労働運動組織化のためには、生産の場が交渉の場として最適だという。また企業家側は、労働者との団体交渉は双方の紳士協定の場であり、法令による枠にはめることを反対した。
統一中央労組(CUT)傘下の組合員らからも、同改革案阻止の抗議文が発表された。改革案は組合最高幹部を特権階級へ組み込ませ、組合下部組織をロボット化すると抗議した。スト権執行は四十八時間前の通告が義務だったが、七十二時間に延長される。これではストの効果が、大きく制限される。
改革案にはストによる企業への損害を回避するため、スト労働者を代行する職員の臨時採用を公式に認めている。スト終了後、スト参加者らはブラックリストに載り、解雇予定組に入る。
組合税の徴収が、法令の指定範囲に制限されたため、労使交渉のプロ起用も難しくなった。これまで労組によっては、組合員の給与の三〇%以上を組合費として徴収していた例がある。