パラナ老人福祉和順会は今年創立三十周年。会が経営している老人ホームは入居費無料で、無料施設としては州内で一番優良と折り紙がついているそうだ。創立者たちは「今や施設は日系三世、四世にとって善意のシンボル」「息子たちは本当にやる気だ」と言い、事業が軌道に乗ったことを喜ぶ▼善意のシンボルとはなんだろう。ホームを支える、具体的な行動をとることはすばらしい、という価値観を持つことだろう。やる気は、入居している(入居する)お年寄りのために、できることはやろうとする気持だ▼日本人はパラナの開発に力を尽くした、今日の日系社会の基礎を築いてくれた、不運にも恵まれなかった人たちの世話を今みるのは当たり前のことだ――こう本気になっているというのである。さらに側面をいえば「日系人の浮浪者がその辺にいるのは恥ずかしい」▼なにしろ、入居費無料である。必要経費は次々出てくるだろう。善意とやる気・本気だけで本当に支えていけるだろうかと心配になるほどだ▼入居は、財産といえるものがない人が対象になる。徹底している。支払いできる人と、できない人が同居すれは、なくもがなのいざこざが生じるからである。だから、最低額でも年金受給者が入居する際は、ホーム側がしかるべき処置(お金を一時預かるとか)をとるとか、以前聞いたことがある▼まもなく、創立者たちは経営の一線をひくだろう。「無料」という希有さが継続されていくのか、関心は尽きない。 (神)
05/3/2