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新型ハイラックス生産開始=トヨタ アルゼンチン工場で

3月3日(水)

 【ブエノスアイレス発=小林大祐記者】トヨタ自動車はアルゼンチン工場(ブエノスアイレス州サラテ市)に二億米ドル(約二百四十億円)を投資、従業員七百人を新たに雇用し、生産体制を強化。年産能力を二万五千台から六万台に引き上げ、グローバル戦略車「IMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)」の量産に南米で初めて乗り出した。
 その第一弾となるのは新型ハイラックスで、今年四万五千台を生産。うち七割をアルゼンチン、ブラジルなど潜在的需要のある中南米市場に投入し、フォード、ゼネラル・モーターズ(GM)など先行メーカーに攻勢を掛ける。二月二十八日の生産開始式にはキルチネル大統領、地元州知事のほか、池渕浩介トヨタ副会長らも出席し、期待の大きさをうかがわせた。
 トヨタが昨年八月からタイなどの東南アジアでスタートしたIMV事業は部品調達から生産・輸出までのほとんどを海外で一貫して行なうのが特徴だ。日本にモデル車があり、部品の多くも日本から供給していた従来の海外生産車種とは、その点で大きく異なる。
 キルチネル大統領は式典あいさつで、「トヨタ上層部との話し合いで、国産部品の使用率を伸ばすことが重要であると互いに確認できた」。その上で、「世界的に評価されているアルゼンチン人労働者と上層部の協力は、必ず利益の拡大に繋がるだろう」と述べた。
 昨年アルゼンチンの自動車生産数は国内需要と輸出拡大により、前年比五三・九%増の二十六万台と経済危機発生前の水準まで回復した。九七年からハイラックスを生産しているトヨタもその追い風を受けた。
 岡部裕之トヨタ・メルコスル社長は、「アルゼンチンの安定した政治経済のおかげで、昨年は過去最高の生産台数一万九千三百五十台を記録した」と報告。従来のハイラックスを全面改良した新型ハイラックスがメキシコ・カリブ地域を含む対ラテンアメリカ諸国向けに輸出される見通しについては、「政府の輸出政策に貢献できると思う」。岡部社長の表情は自信に満ちていた。
 ただ、アルゼンチンのピックアップ市場で九八年以来五年連続の販売台数一位を誇ったハイラックスも昨年はフォード、GMに抜かれるなど販売競争は厳しさを増している。ブラジルでもGM、三菱、フォード、日産の各社に比べやや出遅れているのが現状。より安い部品を効率的に現地を中心に調達する新型ハイラックスの投入で、巻き返しを図りたい考えだ。
 中南米の新興市場での攻勢強化を目指すトヨタは、今年末までにさらに五百人程度を雇用する予定のアルゼンチン工場で、スポーツ多目的車(SUV)の生産にも着手する。
 池渕副会長は「関係事業体や部品などの仕入先と一体となって、世界トップレベルの競争力のある車づくりを現地関係者にお願いしたい」と述べ、「アルゼンチンの自動車産業レベルの向上はメルコスール地域の経済発展にも結びつくはずだ」と期待を寄せた。