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コラム 樹海

 平成の大合併が進み、来年の三月末の市町村数は一千八百九十六までに減るという。今が三千と少しだから大激減と言っていい。岐阜の中津川市と島崎藤村の故郷である長野県・馬籠が越県合併するようなケースもあるし幾つかの町や村が一緒になるのは大いに結構なことである。こうした大型化は将来も進むのだろうが、新しく生まれる市町村の名前の付け方にはいろいろと工夫が欲しいところだ▼愛知県知多半島の先端にある南知多町と美浜町が合併後の新市名を「南セントレア市」にしようとしたのだが、町民たちが猛反対して合併の話までが頓挫したそうだ。同じような例は長野県にもあり「中央アルプス市」と壮大なる名前だけれども、これまた住民の多数が反対。こちらも合併そのものが白紙に戻ってしまった▼「セントレア」ってどんな意味なのかと思ったが、あれは和製英語らしい。英語のセントラル(中心)とエア(空気)をくっつけた無国籍の造語と新聞で知った。町の名や小さな街角の呼び方というものにはその町の歴史や先人たちの思いが幾重にも積み上げられて名付けられたものが多い。昔は、鉄砲町や鍛冶町などと江戸の頃からの呼び方が生きていて―我が町の歩んできた歴史を雄弁に物語っていた▼それが―勝手にいじり回わされてしまい古い町名は消えてゆく。揚げ句には正体不明の横文字では町の人々も救われまい。それでも百万石の金沢市では、役人が消してしまった懐かしくも古くからの町名を復活させようとしている。これはいい話だし、金沢に右ならえの村や町が陸続するといいのだが―。(遯)

05/3/3