ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 外国へ売られるブラジル人女性=相場は1人3万ドル=出稼ぎで出発、到着後売春強要=麻薬、武器密輸より低いリスク

外国へ売られるブラジル人女性=相場は1人3万ドル=出稼ぎで出発、到着後売春強要=麻薬、武器密輸より低いリスク

3月4日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】ブラジル人女性の外国向け人身売買が増加しているのを重視した政府は、本格的に防止へ向けて動き始めた。女性らは正規な職業のいわゆる「出稼ぎ」として外国へ出向くが、すぐに売春を強要される。人身売買のほとんどに国際マフィアがからんでおり、女性らは死の脅迫を受けて身動きが取れなくなる。ブラジル人女性は高級とされ、価値が高く一人三万ドルで取引されると言われ、麻薬や武器密輸に代わる財源として貴重となっていることから、今後もさらに増加するとみられている。連警は外国当局と連携し、犯罪摘発に向けて捜査を開始した。
 国連の指摘によると、年間九百人以上のブラジル人女性が出国して売春に従事している。国際マフィア組織が介入し実態がつかめないため実数はさらに多いとみられている。世界の売春産業は百億ドル市場へと急成長し、麻薬市場の五千億ドルに次いでいる。麻薬や武器の密輸は各国当局の取締りが厳しくなっており先細りが予想されるが、人身売買は摘発されるリスクが少なく、今後も増加するとみられている。
 これまでの連警の調べによると、ブラジルからヨーロッパへの潜入ルートは百近くあるが、最も多いのがスペインの三十二だという。ブラジル人女性のほとんどがスペイン経由で入国しているが、出稼ぎ先としては言葉が似通っていることで、女性らは安心して契約する。
 国際マフィア組織は主にゴイアス、セアラー、リオ、サンパウロの各州に旅行社、レジァー施設、モデル事務所、結婚あっせん所を表向きに開業して、目ぼしい女性を探す。モデルや家政婦、結婚の契約を結んだ女性らは希望に燃えて旅立つが、着いた先で売春婦という落とし穴が待っている。外国の入国管理局はビザがあり、就労の契約書もあることから疑問を抱かず入国を許可する。たとえ偽造パスポートでも決め手がない。
 ゴイアス州の二十五歳の女性は、結婚費用を貯めるためにウェイトレスの契約でスペインに渡ったが、売春を強要され、契約期間の三カ月が過ぎて死体で発見された。医師の死亡診断書は結核が死因となっていたが、家族の申請で解剖した結果、麻薬中毒による肝臓障害だった。マフィアに麻薬漬けにされて売春していたとみられている。いっぽうでカンピーナス市在住の女性は、ダンサーとして契約し、スペインのバレンシアに向かったが、着いた途端キャバレーに送られ、飛行機代だとして一日百ドルを請求されてやむなく売春をしたと供述している。
 政府はこれに対し昨年、二十八万レアルの予算を計上してサンパウロ市連警内に対策本部を設置。連警は主だった州に支部を開設し、防止へ向けて動き出した。さらにスペイン、ポルトガル、スイスなど入国ルートとなる国の当局と連携して犯罪の摘発を強化している。
 スペイン入管は空港で所持金や行き先のほか、所持品の検査を行い、不審な者は取り調べ室に連行する措置を取り始めた。またフランス当局はブラジル人女性十五人に売春させていた国際マフィアのメンバー四人を逮捕した。ゴイアス、セアラー州ではキャンペーンが展開されているほか、ブラジリア大学ではこの種犯罪防止の専門家育成コースが設置され、現在九百六十人がトレーニングを受けている。