その昔―。「箱根山の合戦」で東急の創業者・五島慶太と派手な大喧嘩をした堤康次郎という梟雄とでも申すべき人物がいた。戦後には衆議院議長をも務めた政治家だったが―。「西武王国」を一代で築き上げた辣腕家として知られる。東京地検特捜部に逮捕された西武グループの総帥・堤義明氏の実父である▼故・康次郎氏の女性好きはかなり激しい。入籍している妻だけで三人もいるし義明氏の母・石塚恒子さんは正式な結婚はしていない。兄・清二氏は西武百貨店の経営にあたり一時は日の出の勢いだったけれども、結局は破綻し今は再建中。この人は実業家としてもだが、小説の作家・辻井喬として名高い。三番目の妻・青山操さんの次男であり、康次郎氏が遺した莫大な資産の相続を辞退したとされる▼義明氏は事業の経営手法も実父に学ぶところが多かったらしいが、女性好きも康次郎譲りらしい。週刊誌の見出しによれば、若い女性のフィギュア選手の超一流をホテルに誘いかなりえげつない仕打ちをしたそうである。経営も独断専行。部下が諌言したりでもすれば、遠ざけられか馘首が「堤商店」の鉄則である。この古くからの慣行が「西武」という財閥を目茶苦茶にする▼堤康次郎氏が実業人として売り出したのは軽井沢の土地買収であり、今も広大な土地を所有しホテルやレジャー施設を経営している。義明氏は、ここの別荘に1年のうち250日を暮らし、専用ヘリで東京や全国を飛び歩く。そんな世界一の大金満家でも、結局は「カネの虜」になってしまい逮捕とはいかになんでも情けないではないか。 (遯)
05/3/5