3月9日(水)
【クリチーバ発】ブラジル仕込みのサッカーで被災地盛り上げて――。サッカーJ1に所属するアルビレックス新潟は一月から二月中旬にかけて、恒例となったブラジル合宿をパラナ州クリチーバ市内で行った。昨年、昇格後初めてとなるJ1のシーズンを年間十位で終える健闘ぶりを見せたチームを率いるのは未来の日本代表チーム監督との呼び声さえある若き知将、反町康治監督。真冬の日本を離れて、地球の反対側で濃密な合宿を終えた反町監督は、昨年の新潟地震で大きな被害を出した地元を、好成績で盛り上げたいと精力的に指導。昨年の合宿を訪れ、激励した新潟県人会の南雲会長も「サッカーでぜひ明るい話題を」と期待を込める。
J2から昇格したばかりで「新入生」として挑戦した昨年は、前期こそ十六チーム中十四位と低迷したものの、後期は建て直し七位に食い込み、年間順位を十位で終える「合格点」。その原動力となったのが、熱血漢、反町監督の好采配とチームを支える三人のブラジル人選手だった。
失点こそ多いものの、リーグ三位の攻撃的なサッカーを披露し、Jリーグで最多となる平均観客動員約三万八千人を記録し、地方都市新潟を盛り上げた。
クリチーバ市内にあるアトレチコ・パラナエンセの練習場はブラジル国内でも有数の施設で、三年連続となる合宿もここで行われた。
ブラジル合宿を行うのはアルビレックスだけとあって、地元紙やNHK、民放などの報道陣もブラジルでの一挙手一投足を追った。合宿では長いシーズンを戦うための体力作りと戦術理解に重点が置かれた。また、今年から元ブラジル代表への招集歴もある右サイドバックのアンデルソン・リマも新規加入。国内最高峰の選手として知られるアンデルソンは「ブラジルではない地震があったことも知っているが、僕も家族も気にしていない。早く、日本に慣れて頑張りたい」とキッパリ。
合宿終盤の練習試合ではパラナ州の名門クラブであるアトレチコ・パラナエンセやコリチーバなどと対戦し、計六試合一勝二敗三分けで終えた。
三人のブラジル人だけでなくフィジカルコーチやGKコーチもブラジル人で固め、また通訳にもブラジル在住経験のある日本人や日系二世を用意するなどブラジル色がとりわけ強いアルビレックス。反町監督は「時差や距離のデメリットがあってもブラジルで合宿する利点がある。いい形で仕上がったし、今年はかなりいけますよ」と手ごたえを語った。
昨年はクリチーバ市だけでなくサンパウロ州内でも合宿したため、南雲会長ら県人が激励に足を運んだ。現在、被災から立ち直ろうとする母県を支えようと義捐金集めに奔走する南雲会長は「せめて帰国前に、空港まで激励に行きたかったのですが仕方ない。ぜひ、サッカーで新潟を盛り上げて欲しい」とエールを送る。
二年目となるシーズンは三月五日に開幕。ブラジル合宿の成果に期待したい。