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日伯経済シンポ=投資環境の整備など議題に=急がれるEPA締結

3月10日(木)

 【一部既報】三日午後、首都ブラジリアで開催された伯日議員連盟(小林パウロ会長)主催の日伯経済シンポジウム「二十一世紀のブラジルと日本の戦略的パートナーシップ」では、二十一世紀の両国関係の見取り図を模索する、両国の政財界代表による熱心な話し合いの場が持たれた。これは昨年九月の小泉首相来伯に始まる、三年後の百周年を見越した両国の関係再構築を通して、アジア圏と南米圏の新しい関係を探る試みといえそうだ。五月のルーラ大統領訪日への下準備とも言える今回のシンポジウムの内容を続報する。

 当日は三つの議題ごとに話合われた。本紙五日付けで詳報したように、一つ目は「相互補完パートナーシップ」(両国に利益のある関係)についてで、JBIC(国際協力銀行)の森田嘉彦副総裁とペトロブラス(石油公団)のラエルテ・ロッシャ・ピーレス財務企画マネージャーが講演した。
 森田副総裁が日本企業へのアンケート調査から、ブラジルは有望だと思われている一方、法律運用の不透明さ、治安や社会情勢の不安定さなどの問題も認識されていると指摘。「二〇〇〇年以降で三十六億ドルもの融資をしてきているが、それに匹敵するぐらいの案件を現在いただいている」と期待を込めた要望を言明した。
 同議題のまとめとして、進行役を務めたパウロ・デウガード下議(伯日議員連盟副会長)は「日本企業は警告を発している。ブラジルに来る実業家、観光客、ブラジル市民にも安定してゆっくり働く権利があり、それを侵害しているものは両国間の問題だ。特に劣化している空港、道路、鉄道などインフラ整備は焦眉の急であり、その意味でも日本の協力は重要だ」と総括した。
 二つ目は「貿易・投資の現状と展望」。JETROサンパウロの桜井悌司所長はポ語で発表。日本の対伯輸出の順位が一九七六年の二十一位から〇四年には二十八位まで下落、同様にブラジルからの輸入も七六年の十六位から昨年は二十七位にまで落ち込んだと現状分析。
 対伯輸出を増やすには「直接投資を増やす」ほか、「ブラジル市場へ日本の先端技術を紹介するために、ブラジルの国際展示会などへの出展機会を増やすことや最新技術の宣伝を強化する」などの方策が必要と提案した。ブラジルからの対日輸出を増やすには、日本での国際展示会へ五年連続で出展、二十八万人のデカセギ市場を狙った企業進出を図ることなどが必要とした。
 日本からの投資を増やすためには、投資環境の整備、投資家を魅了する「新しいブラジル」イメージのアピール、大経済使節団を一回送るより中小使節団を複数回送るなどの誘致策の重要性を訴えた。中でも東京にサンパウロ州出張所を設け、州製品の紹介、投資の勧誘、旅行者へのアピール、デカセギ支援を実施することの必要性を強く語った。
 ブラジル側からはBNDES(国立開発銀行)の総裁補佐官ジウソン・シュワルツ氏が、アジア研究会創立者として長年、日本との経済関係好転への働きかけをしてきたが難しかった経験を振り返り、相互に利益のある新しい経済発展モデルを、両行が核となって共に模索することの意義を語った。
 三つ目の議題「投資環境整備」では、高山ヒデカズ下議が進行役になり、まずブラジル三井物産の大前孝雄社長が、商社マンとしての経験を存分に反映した率直な提言をした。
 自身が商議所の日伯経済交流促進委員長でもあり、EPA(経済包括協定)締結の重要性と緊急性を訴えた。五月大統領訪日は、日伯EPA締結に向け検討開始の絶好の機会であり、官学民一体となった研究会の設置に関して合意することを強く要望した。
 閉会式には、正副大統領次ぐ国家第三の要職にあるセヴェリーノ・カヴァウカンテ下院議長が現れ、日伯関係進展への期待と、シンポジウム成功に賛辞を送った。