敵対的なM&A(企業の合併・買収)というのは、欧米の企業では普通のことらしいが、日本では余り一般的とは申せない。IT産業で急成長したライブドアのニッポン放送株式の買い占め作戦が好例である。外国語新聞の記者らは、ライブの社長である堀江貴文氏に熱い視線を向けているそうだが、政界や財界の多くは批判的な見方が圧倒的である▼フジテレビのTOB(株式の公開買い付け)が成功し、ニッポン放送の発行株式の4割近くを取得したのは何より喜ばしい。が、ライブの方は既に45%を手中にしているし、これからも買い増すと宣言しているので―戦争が終わったわけではない。それと―もう一つ。ニッポン放送がフジテレビ宛に発行する新株予約権の問題が残る。これも役所では認めているようなのだけれども、法的にはいろいろと議論がある▼ライブドアは新株発行の取り消しを求めて提訴しているし、これの判決によって事態は右にも左にもなってしまう。もし、ライブの差し止め請求が却下されれば、フジテレビの完勝となる。新株予約権が発行されれば、フジの持ち株は70%に跳ね上がるのだから、これで勝負は完全に決まる。逆になってライブの提訴が認められれば、ニッポン放送の経営は二大株主の対立が激化する▼この株争奪戦を振り返ってみるとライブの堀内社長が主張するマスコミ論には、無理があるのは否めない。ニッポン放送の従業員らが立ち上がって「ライブの買収に反対」を表明した大きな原因は、マスコミをいかに考えるか―であったし、多くの視聴者も同じ思いではないか。(遯)
05/3/10