3月11日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六日】ブラジルは地震に縁のない国というのが通説となっている。ところが年間平均九十回発生しており、地震国の仲間入りをしていることが明らかになった。そのほとんどが揺れを感じない微震や弱震だが、マグネチュードM3規模のものも年十回程発生している。過去には、一九五五年と八六年にM6・6の地震が発生し、家屋四千件が全壊するなどの被害にあっている。最新のものでは二月八日にマット・グロッソ州で観測されたが被害はなかった。当局は危険地域と目される個所に震度計や予知のための機器を設置して対策に本腰を入れ始めた。
サンパウロ大学(USP)地質学グループが過去十二年間にわたり全国五十九カ所の延べ二百万平米を調査した結果、年間九十回に及ぶ地震が確認された。このうちM3を記録したのはゴイアス州西部、パンタナル地区東部、三角ミナス、サンパウロ州北東部だった。
とくにゴイアス州イポラー市では地質が軟弱なためM3以上の地震が年平均二回発生している。地震の強度を示すマグニチュード(M)は一九三五年にアメリカのチャールス・リッチャー博士により設定され、国際的指標として使用されている。九段階に分かれており、M3までは微震および弱震で、ポイントを上げる毎に強震、激震、烈震と区分けされている。
ブラジルの場合、M4(揺れを感じる)が年に一回、M5(わずかの被害)が五年に一回、M6(かなり大きい被害)が五十年に一回、M7(被害甚大)が五百年に一回、M8(施設や家屋崩壊)は可能性なし、M9(破局的被害)は起こり得ないと報告されている。
ブラジルは南米大陸の一枚岩の上に位置するため地下での地震発生にビクともしないというのが通説となっていたが、同大学の調査によると、この一枚岩は実はモザイクのように細かい地盤が重なって出来ているものだという。これにカリブの大陸棚や大西洋海底山脈の海底棚がぶつかり地盤が沈下し地震を引き起こす。過去に発生した国内の地震はモザイク地盤の境界線からエネルギーが地表に出たものとみられている。
サンパウロ州リベイロン・プレット(サンパウロ市から三百十キロ)地方ベベドウロ市の農村地帯では、八キロにわたって得体の知れない震動が続き、住民はパニックに陥っている。窓ガラスは揺れ、家具類は崩れ落ち、家屋は傾斜している。牛や馬などの家畜も恐怖におののいている。地震なのか、あるいはミカン畑の灌漑用に掘られた井戸が原因なのか、専門チームが急きょ派遣され調査を行っている。
ブラジルでは、一九五五年一月三十一日マット・グロッソ州ポルト・ドス・ガウショス市でM6・6の大地震が発生、八六年にはリオ・グランデ・ド・ノルテ州ジョアン・カマラ市で同規模の地震が発生、四千軒の家屋が倒壊した。
世界では一九五二年のロシアのカムチャッカ地震(M9・0)、五七年アラスカのアンドリーオフ島(M9・1)、六〇年のチリ地震(M9・5)、六四年のアラスカのアンカレジ(M9・3)、さらに昨年十二月二十六日に巨大津波を引き起こしたスマトラ沖地震(M9・0)がある。M9以下でも人的、経済的被害が大きかったのは、七六年の中国の天津地震(M7・9)で、百万人が死亡した。九五年の阪神大震災(同規模)では二千億ドルの被害を受けた。