3月15日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】米州開発銀行(BID)は十二日、外国で就労するブラジル人の本国送金が二〇〇四年に五十八億二千四百万ドルに達したと発表した。この額は同年の大豆輸出五十四億ドルを上回り、メキシコの百六十六億ドルに次ぐ。二百五十万人に上るブラジル人のサービス輸出は、大豆輸出を上回る新産業として注目されている。
外国で就労するブラジル人の国別ランクのトップは、米国の百万人。続いてパラグアイの三十二万人、日本の二十七万人、ポルトガル十一万、英国十万、イタリア八万、ドイツ六万、フランス六万、アルゼンチン五万、スイス四万五千、スペイン三万五千などとなっている。
BIDの報告では、ブラジル国内で百三十万人以上が外国からの送金で生活をしているという。テレビドラマ「アメリカ」が放映されるように、密入国して違法就労で稼ぎ、留守家族を扶養するブラジル人も多い。同ドラマは、米国在住ブラジル人の悲喜こもごもの実態を伝える。
米国マサチューセッツ州のブラジル食品を販売するスーパーで清掃人として就労するジョアン(54)、アナ(48)夫妻は、サンタ・カタリーナ州クリシウマ市での生活が苦しくなり、米国行きを決意した。ゴヴェルナドール・ヴァラダレス市の業者を頼って一九九八年、着の身着のままで密入国を果たした。夫婦は毎月、留守を守る娘二人に二千五百ドルを送金する。
外国就労者の本国送金は〇一年から〇四年までに一二三%増加し、ブラジルにとって年々貴重な外貨となっていった。南米大陸は〇四年、直接投資が三百六十億ドル、無償供与が四十億ドルに対し外国からの送金が四百五十億ドル。外国での就労は、南米の新しい産業だ。
米国就労者(ブラズッカ)や日本就労者(デカセギ)のプロフィールは異なる。ブラスッカはほとんどが不法就労で、平均一人当たり千五百ドルの所得が精一杯とみられる。ブラズッカの送金の平均は、五百ドルを年七回。日本就労者はほとんどが正規就労、月収三千ドル以下。ほとんどのデカセギは、収入の五四%をブラジルへ送金する。平均で千二百ドルを年七回送金とBIDが発表した。トランクにドル紙幣を詰め込み、担いで帰国する就労者もいる。
ロベルト・アブデヌ駐米ブラジル大使は、フロリダ州に就労するブラジル人を、不法合法を合わせ二十万人とみている。郷に入れば郷に従えで、米国流ビジネスに同化し、米国社会に根を生やすブラジル人経営者も多い。
インド人コンピュータソフト要員の大量米国入りの波に乗って、コンピュータ関連企業の管理職に就いたブラジル人技術者も少なくない。ブラジルの卓越した銀行ソフトや金融ソフトが米国で生かされた例だ。
他にもバイオやハイテクの技術者、シュラスコ(ブラジル式焼肉)の専門家として就職し、米国の中流階級に座を占めた者も多い。外国就労者が全員、皿を洗い雑巾掛けをしている訳ではない。