3月15日(火)
もっとコロニア一般のコンセンサス(総意)が必要――。コロニアの〃元老〃野村丈吾元下議が、十二日開かれた百周年準備説明会で発言し、一世を中心にした来場者から万雷の拍手を浴びた。現在コロニアを二分するヴィラ・レオポルジーナの日伯総合センター案に再考の余地ありとの見解を公式に示した。後日、野村元下議のもとに電話や質問が相次いだという。「自分の立場と考えをはっきりコロニアに示したい」との考えから、急遽十四日、リベルダーデのレストランで記者会見を開いた。
「昨日電話でね、『あんた、今の執行部を倒して自分が会長になるつもりか』っていう人もいてね。冗談じゃないって―」。
すでに八十五歳を迎えた野村下議、「あと十年は頑張る」と宣言するだけあって意気は軒昂、コロニア、そして百周年に対する思いは熱烈だ。
大正十二年に来伯、ジャングルで開拓生活を送った両親についても触れ、「私はピオネイロの二世として、移民百周年祭には責任がある」と表情を引き締めた。
「現執行部は応援しているし、協力もしたい」。野村下議は強調する。
事実、二年前の組閣の際、上原幸啓会長と懇談、会長に就任することを勧め、高名な大竹ルイ氏の設計も賞賛する。一時はセンター案に大賛成だった。しかし―。
「我々年寄りには場所が遠過ぎる」「地下鉄が通るというがいつなのか」「今の執行部の人は近寄りがたい」。
毎日のように自宅にかかってくる電話で各世代からの声を聞き、「学者の話だけでなく、一般やお年よりの気持ちはどうなのか」という感を強くしたという。「苦労された一世を尊重してこその百周年であるはず。彼らの声を聞いてこそのコンセンサスでは」と胸中を述べた。
コロニア一般の声を聞き、文協役員選挙へ初めて対抗シャッパが出そうだという情勢になったことで、ついに〃元老〃は動いた。
「百周年まで今の執行部にやって欲しい。という気持ちがある。現在、出馬が予想されている各候補者には、私が頭を下げても(出馬の意思を)〃凍結〃してもらって、百周年は皆で力をあわせて成功させてほしい」。
その代替案として、文協に隣接する軍用地取得の可能性を挙げる。野村元下議によれば、「(軍関係者も)日系コロニアに売却することは軍にとっても意義がある」と話しているという。
「もう決まったから、というのではなく、現在の文協の場所でなんとかならないか―」。予算や売却の具体的な提示が再考の突破口になるのでは、と期待をかける。
「自分は年配だし、彼らに対して意見を言う義務がある」。自身も委員を務める高等審議会を召集すべく植木茂彬会長に対し、早急に話をし、この考えを審議してもらうつもりだ。
五月のルーラ大統領訪日時に記念事業案を日本に紹介する日程にこだわる執行部に対し、「百周年の話は、大統領とは別に日本へ持っていってもちゃんと聞いてもらえる。その前に、ちゃんとコンセンサスを作る方が大事だ」と強調した。
現執行部成立時にブラジル社会で活躍する日系著名人を中心に組織された高等審議会。今まで表に出てくることはなかったが、今回コロニアの御大の登場により、ご意見番としての初めて役割を果たすことになりそうだ。
【高等審議会】〇三年、改革の一環として組織された〃新生〃文協の顧問的役割を果たす機関。会長=植木茂彬、副会長=貞方賢彦、青木智栄子、小原彰、委員=横田パウロ、鈴木妙、野村丈吾、安田ファビオ、翁長英夫、篠又幸市郎、大竹ルイ、続政剛、和井武一、山崎チヅカ、上野アントニオの十一氏。