3月16日(水)
【ヴェージャ誌】ルイーザ・H・トラジャーノさんは、十二歳の時にサンパウロ州フランカ市で伯母の店に店員で採用されたのがこの道へ入ったキッカケ。身長は一・五メートルで小柄、会話は地方出身者の方言丸出し。どこに彼女の才能が秘められているか不思議だ。国内第四位の売上を誇るマガジーネ・ルイーザ二百五十四店と五百万の顧客を率いる女性実業家。ガソリンスタンドを経営する夫と結婚、三人の子供の母親、五十三歳。
以下は、気さくな彼女の人生哲学と経営の秘訣。
【店員の社会的地位が低いのは】以前は店員に採用されると、先ず主人から顧客の騙し方を教育された。長年店員をすると、妙な自信と人生哲学が身に付く。目敏さと世渡りにかけては、誰にも負けない。なまじっか教育を受けるより世渡りで勝負をして、金で世間の人間をあごで使う。それで店員や販売係にはハミ出し者が多い。
伯母は、だまして得したと思ってはいけない、そして店員であることに誇りを持てと厳しく店員を教育した。だまし取った金は返しなさい。店員として誇りが持てれば、幸運が後を着いてくると諭した。物売りが天職として身に着くと、一生飢えることが決してない。
【店員の教育法は】才能があると見込んだら、人生計画を創らせる。奨学金を与えて、最高学府に学ばせる。名刺には役職や地位を印刷させない。原則として社長以下全員が店員で、新規採用の幹部管理職も店員の職務から始め、店員の技能を身に着けさせる。
会社の利益が社員の生きがいと感じさせる。それを社員の懐と理性に実感として会得させる。各社員は経営者感覚を体得し、プロのセールスマンであること。固定給で満足する社員は失格、欲しいだけの給料を自分で稼ぎ出すのだ。
【歩合給による店員間のあつれき対処法は】どこの店でも店員は歩合給なので、販売至上主義の弊害がある。それで、現金販売を中心とする、利益の歩合制とした。月賦販売や月賦期間、総売上高によって報奨制度を類別し、また販売技術や商品知識、話法、消費者心理学などを学ぶ仕組みを作った。
給料支払い総額の二〇%は、各店のメンバーに均等に分けて団体行動を奨励する。成績の上下で各店間の給与格差は大きく異なる。先輩店員は後輩の指導に真剣になる。運命共同体システムなのだ。
【金持ちの哲学とは】貧乏人は金持ちになれない。考えることが貧しく、やることはみみっちい。そして借金の大穴を開ける。先日、新規出店の企画を業者に依頼した。持ってきた企画は、つつましく貧弱で面白さがない。奇想天外で独創的な企画を考える頭はないのかと業者を叱った。
次は期待したものを持ってきたので、いかに資金を捻出するかを考えることにした。どこの会社でも、素晴らしいものを考えてくれと注文する。だけどベラボウに高いのは困るという。ここに間違いがある。いまは素晴らしいものを考えるときで、価格を考えるときではない。これが貧乏人と金持ちの違いだ。
【これから独立する後輩への忠告は】会社の規模にかかわらず、予算管理を厳格に行う。それが駄目なら致命傷だから、会社経営は断念する。月賦販売は全額決済になるまで臆病でよい。利益が少ないので、債務不履行を償却するのに苦労する。予算管理のズサンな会社が大きな取引をしたら悲劇だ。顧客と社員、予算管理が経営の三本柱だ。