3月18日(金)
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は十一日正午、市内ホテルで定例昼食懇談会を開催し、主賓である中央銀行のヘンリッケ・デ・カンポス・メイレーレス総裁は「最近のブラジル経済の動向」について一時間近く講演、日系企業代表の高金利政策への批判・質問にも真正面から応じた。
挨拶にたった田中会頭は「各界からのプレッシャーをものともせず、適切な経済政策をとり、素晴らしい経済成長を成し遂げた」とその手腕を褒め称えた。
メイレーレス総裁は、「日本からの投資は重要。以前、銀行マンをしていた時は、長年日本企業とも仕事をさせてもらった。ブラジル経済が皆さんからの投資に値する環境を整えることを、最重要課題としたい。五月のルーラ大統領訪日には私も同行する予定です。私たちと共に、みなさんも成長しましょう」と語り、通常よりも多い百五十人余りが参加した会場から大きな拍手を浴びた。
「昨年、顕著な経済成長ができた理由の一つは、二十年余りブラジル経済を苦しめ続けた高インフレを抑制する政策の成果だった」と総裁は総括した。
ブラジル経済のネックであるドル建て対外債務を集中的に支払って極力減らし、外貨準備高を蓄える方針を頑なに貫き、体質改善に心を鬼にした。
それまで「先進国で風邪を引けば、ブラジルは肺炎」といわれていた国際市場の流動性への脆弱性を徐々に克服し、構造変革に成功した。その詳細を経済成長率、貿易収支、失業率、設備稼働率など多くの表を駆使して説明した。
雇用も増加、〇三年六月から賃金は大幅に向上しており、確実な安定成長路線に入ったと分析した。
「円にはかなわないが、ユーロに比べても同様の通貨安定性をみせてきている。ブラジル通貨は確実な存在になってきた」と自信をみせた。
これに対し、日本企業から「インフレ抑止の素晴らしい仕事をされているが、経済成長を犠牲にしていないか」との質問がでた。
総裁は「高インフレのまま成長した国はない。ブラジルはハイパーインフレの伝統のある国であり、その抑止には最大限の注意を払わなくてはならない。タイトだといいつつも、現在も五%の経済成長を記録している。我々も、最終目標は安定した経済成長だ。そのほうがみなさんの安定経営にもつながるのではないか。いつか、本当に安定すれば他国なみの金利になります」と答えた。
その他、「先進国では可能なドル口座が、ブラジルでは許されていないが」との質問に、総裁は「最近、国外送金に関する重要な為替政策を変更したばかり。当面はその変更の結果を見つめる必要がある。急がず、あせらずやっている。個人法人とも、外国との取引がやり易くなる方向で努力していきます」との方針を示した。
定例行事の会社代表交代では、ブラジル日本郵船の藤江一郎氏が四年の任期を終え、新任の丸山亘氏へ。川崎アエロナウチカの小牧康夫社長から石黒市郎社長に交代した。
新入会員では、ブラジル駐在十九年の経験を持ち定年後再びブラジルにきた関根実氏(個人)、ゴールデン・チューリップ・パウリスタ・プラザホテルのセルミーラ・サルデンベルグ氏、オーノ押切弁護士事務所の押切フラビオ氏が自己紹介し、田中会頭から会員証が渡された。