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日本語の「自然習得」状況調査―助川泰彦・東北大学助教授が来伯―デカセギなど対象に=対応遅れている宮城県=外国人支援につなげたい

3月24日(木)

 宮城県内に居住する外国人の日本語学習をテーマに、早稲田大学、東北大学、宮城教育大学による共同研究が行われている。外国人配偶者やデカセギを対象に、日本語の自然習得の状況などについて調査しているもの。愛知県や静岡県などデカセギの受け入れ〃先進地〃に比べて、行政の対応がまだ遅れているといわれる宮城県。研究結果に、大きな期待が込められている。
 文部科学省が〇三年度から〇五年度まで、研究費を助成。年少者教育の第一人者といわれる、川上郁雄早大大学院日本語教育研究科教授(文学博士)が関わっている。同博士と助川泰彦東北大助教授が先ごろ、来伯して、ブラジル日本語センターの「子供テスト」やABC地区の「級位テスト」などを関係者から聞き取り調査した。
 助川助教授によると、宮城県内に住む外国人は二万人で、人口の一%。国際交流協会や仙台市は生活・医療・法律などについて、四~八言語によるサービスを行っている。これから、外国人居住者が増加すると見込まれている。
 中国人、韓国人、フィリピン人など外国人配偶者は、海岸部に散在。同じ国籍を持つ人が、固まって居住しているわけではない。日本語教室に通ったり、郷土料理の交流会などを通じて、日本語を学んでいる。
 七〇年代まで、日本語教育の対象は、留学生や技術研修生が主だった。現在は、国際結婚による外国人の入国が増加中。外国人配偶者の言語習得プロセスなどを明らかにしようというのが、調査の狙い。その結果を外国人支援につなげたいという願いが、込められているようだ。
 研究は、外国人配偶者を対象にスタートした。調査を進めるに連れて、ブラジルから来たデカセギに行き当たった。「大和町に集住して、日本人との付き合いがほとんどない」エスニック・グループ。研究上、無視出来ない存在だと判断した。
 教育現場で教師がデカセギ子弟に対して、手探りで対応しているのが実状。助川助教授は「〇四年四月にようやく、ブラジル人の専門員がつくようになった」と明かす。それも、「画期的なことだった」という。
 子供の評価について、日伯両国で価値観の違いが現われることなどから、ブラジルの教育現場を視察しようと、現地調査を決めた。日本語教育機関のほか、アルモニアや赤間学院などにも足を運んだ。
 助川助教授は上智大学ポルトガル語学科卒で、来伯は初めて。「カンピーナス大学でレベルの高い言語学の専門書を見つけて、びっくりした。と思ったら、その日の午後、公立学校で窓グラスが割れているのをみて、ショックを受けた」と情報過多に少々混乱気味の様子だ。
 これからじっくり視察内容を整理していきたい考えだという。