浜の砂粒の中にも宇宙が=パウロ・コエーリョ氏=最新作を発刊=独特の宇宙観、世界を魅了=多数の読者の人生変える
3月30日(水)
【ヴェージャ誌一八九七号】世界的に有名なブラジル人作家パウロ・コエーリョ氏は、宇宙と人間の関係についての最新作「ザ・ヒール」を発刊する。同氏の著作は百五十か国で発売され出版総数六千五百万部。これまでの著作収入は一億二千万レアル、年間収入は四千万レアルとされる。英語で出版された「ザ・ヒール」の第一部「新しい出発」の著作料は、津波被害者へ贈呈された。
著作の一つ「錬金術師」の一節、海浜の砂の一粒の中にも宇宙はあるというコエーリョ氏の宇宙観が、米国で一世風びとなった。浜の真砂も宇宙も同一物という。山川草木に神宿るとする東洋思想にも通じる考え方だ。「錬金術師」は、クリントン前米大統領の愛読書となっている。
自宅はリオ市アトランチカ大通りにあるが、フランスのピレネー山脈ふもとにある山荘で瞑想の日々を過ごす。同氏の著書は、特に女性と青年らに感銘を与えている。言葉と文化の壁を越えて、同氏の宇宙観が人生を変えたという読者が全世界に大勢いる。
全文を読まなくても、一句でインスピレーションを受けたという人も少なくない。ビートルズが聴衆を陶酔境へ誘ったように、同氏の言葉にも不思議な力がある。「宇宙に調和するなら、宇宙があなたの味方になる。あなたは、あなたが選んだものの永久なる責任者」は「錬金術師」の一句。
五三%が神を信じるといわれる米国の青年らが参加したテレビ番組に、同氏は招かれて出演した。同氏は会場に設けられた砂漠から現れ、会衆に言った。「砂漠は物事に集中するには良い所だ。あなたは砂漠をどう思うか。まずあなたの心を集中しなさい」。ビートルズの「愛こそはすべて」が同氏の愛唱句だという。これは愛欲の愛ではなく、命の愛だ。
「ザ・ヒール」は、自叙伝をある夫婦のロマンスとして描いた。自分を夫に据え、妻に愛想をつかれた変人として登場、人生行路で手にした数々の悟りを語る。多くの女性が登場するが、彼女らはプラトニックラブの関係を持つ世界的に有名な女性とされる。
大衆への説教や文学者と会食するのは大嫌い。フランスの出版社のアン・カリエル社長からフランス語を話せないのが残念だといわれた。同氏は急きょ帰国し、フランス語の特訓を始めた。
三カ月後、フランスへ戻り二十一都市で出版記念会を開いた。特に評判の高い三作「錬金術師」「超能力者の日記」「川辺でシオンを仰いで泣いた」を発表し、九百万部を売った。現在は、世界津々浦々でベストセラーとなっている。
「ザ・ヒール」は、世界一の海賊版国イランから発刊を始めた。海賊版が出る前に売ってしまおうという戦略だ。二十日に販売開始し、三日間で四百万部を売った。CNNやBBCで一日五回、三十秒ずつ宣伝広告が行なわれている。
ザ・ヒールの一節にイベリア半島を横断鉄道で旅行する寓話がある。スペインではパウロ・コエーリョ氏を偲んで同氏の著作を語り、その宇宙観に浸るツアーが企画された。