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国連人権報告=ブラジル司法機関を酷評=国民の要望に応えず=ノロノロ審理、縁故者優遇=社会的弱者は泣き寝入り

3月31日(木)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】滞伯中のレアンドロ・デスポウイ国連人権委員は二十九日、ブラジルの司法当局が知人を優遇する縁故主義に偏り、国民の要望に応えていないとする報告書を提出した。裁判所の審理はのろく、一般庶民が司法機関で対応されることはほとんどなく、一部縁故関係者の専有物になっているとした。国民が司法制度から遠ざけられていることは、ブラジルの根深い人権問題と指摘。司法改革は十一月に行われたが、現実には何も変わっていないと評価している。
 国連報告書は、アルゼンチン出身の法制専門家レアンドロ・デスポウイ委員に執筆された。同委員はブラジルの司法制度が機能していないと結論し、二十二項目の改善を要望した。同報告書は国連人権本部から近日中にも公開される。政府は、実情釈明のために関係者の派遣を検討している。
 報告書によると、ブラジルの人権に関する根本的問題は一般庶民が社会的地位や経済的事情、教育レベルなどの理由で司法機関から遠ざけられ、法の恩恵を受ける道が断たれていることにあるという。所得格差に基づく司法機関と人々の距離の差は顕著で、一般市民は法知識習得の機会はなく、人権の意味も知らないとした。
 特に先住民や黒人、母子家庭の子供、同性愛者、女性の社会的弱者などに対する非人道的差別は、深刻だと訴えている。抵抗力のない弱者に対する虐待は、司法機関から顧みられることが全くない。婦女子への暴力は罰せられず、犠牲者の落ち度として闇に葬られるのが通常だという。
 パラー州で一九八五年から二〇〇一年までの間に、千二百人の農民が殺害された。殺人容疑で起訴されたのは八十五件で、残りは迷宮入り。同地方では殺人事件の九五%がウヤムヤになり、司法制度は存在しない。人権活動家は生命の危険にさらされているので、国際機関の職員が現地を視察するよう勧めると同委員は述べている。
 司法機関のノロノロ手続きは、犯罪天国を生み出している。裁判所のスローモー審理で判決まで時間がかかり過ぎ、事態は一変してしまう。犯罪者には事後処理や揉み消し、官憲買収の時間が十分与えられる。犠牲者は泣き寝入りし、犯人には法律はあってないも同然。
 同委員は、最高裁判事の任命基準の変更を提案した。現行基準では大統領が指名し議会が承認する方式なので、最高裁に政治が介入する。これを国家試験制に変えるよう進言した。現在の司法機関は縁故採用や身内の信任職採用が多く、職員の栄転基準が不透明なのも能率低下の原因だと指摘した。
 高等裁のエジソン・ヴィジガル裁判長は、多くのデータを基に超特大級の四つ足動物(訴訟)の足を砕いているという。ノロノロ審理は当然だとうそぶき、改善の意志はないらしい。
 会社役員のバックシー氏は七二年、妻と財産分配条件で合意し別居した。妻は他界したが、まだ仮処分が出ていない。三十三年経過した現在、不動産価格が変動したため別居当時の評価額で分配のやり直しを裁判所から命じられた。三十年前の不動産相場が分からないため財産分配審理は停止し、相続手続きもできない。