4月5日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二、三、四日】リオ市で三十一日夜、市民三十人が連続的に無差別射撃を受けて殺害されるというブラジル犯罪史上最悪の事件が発生した。軍警は目撃者の証言やそれに基づくモンタージュ写真から、第十五軍警隊所属の現職軍警三人を犯人と断定し二日、逮捕した。
狙撃犯らは約一時間にわたって行き会った市民らを見境なく射殺した。被害者の中には女性や子供もいた。軍警によると、犯人らは第十五軍警隊に巣くっている、収賄などの不正を働いている悪徳警官の仲間で、同大隊の司令官による綱紀粛正が厳しくなったことに対し、犯罪を巻き起こして司令官に責任が及ばせ、失脚するのを狙ったとみられている。
この事件の前日、二人の男性を殺害し、そのうちの一人の首を同大隊内に投げ込んだ罪で逮捕された八人の軍警も同じ仲間で、この事件との関連も指摘されている。
ルーラ大統領は「非人道的事件」とのコメントを発表、事件の徹底解明を指示した。これを受けてバストス法相は捜査を側面支援するため、ブラジリア連警の出動を命じた。さらにリオ市の治安強化に陸軍六百人を当てることを決めた。
事件は夜八時から一時間の間に発生した。自家用車とオートバイに分乗した犯人三人はリオ市内ノーヴァ・イグアスで、出会い頭の市民に当たり構わず発砲して射殺した。もっとも惨状を呈したのは十キロ離れた隣接のケイマド市のバールで、車を降りた三人は何も言わずに射殺し、店内にいた九人を即死、一人に重傷を負わせた。
犯人らは銃弾の薬きょうを拾い集めて持ち帰り証拠隠滅を図ったが警察では数個を発見した。これにより使用された銃を軍警のものと断定し捜査を進めた。逮捕された三人の自宅からは使用された銃が発見された。
これまでに軍警による市民の集団殺害は、一九九三年八月三十日にリオ市内ヴィガリオ・ジェラル区のファベーラ(スラム街)で発生している。軍警四人が殺害されたことで仲間らがファベーラを襲い二十一人を殺害した。いずれも凶悪犯や麻薬組織員とみられていた者ばかり。このとき軍警らは、女性や子供は事前に安全区域に誘導するという配慮を見せた。