4月6日(水)
【エザーメ誌八三七号】二十世紀の花形産業が自動車なら、二十一世紀の花形産業はエンターテイメント(娯楽)といえる。エンターテイメントは人々の生活スタイルや習慣、立地条件を変え、企業の経営形態も変革する勢いだ。すでに一兆三千億ドルのメガ市場で、医療と原油を除き自動車産業や軍事産業、情報産業をも凌駕した。
ブラジルでも会社の電話で下らない長話をする人を白い目で見る人はいなくなった。電話局はテレビ電話を普及させ、映画やゲームなどに使えるよう企画している。テレビ電話でサッカーW杯や短編ドラマの放送を行うらしい。
十二万人のモデルを集めるサンパウロ・ファッションウイークは、スポーツ番組に平行してファッション番組を流す計画。エステは「努力なくして何も得られない」の看板を下ろし「健康を増進しながら楽しい人生を」に取り替えた。どの番組も豊富に音楽と踊りを取り入れている。
自動車は乗るためでなく遊ぶため。住宅にDVDシアターは必須。食品は空腹を満たすためでなく遊びの脇役へ。料理は友人をもてなす演出。料理器具やワイン、レシペは演出の小道具。製薬会社はヴァイアグラが媚薬ではなく、楽しい人生の裏方であることを発見した。
宗教も楽しい宗教に変わった。硬いことをいっていては取り残されると悟ったようだ。マルセロ・ロッシ神父の出現によって、伝統的ミサはあがったり。ショー的ミサは、十万人の参加者を集める。
映画館やラジオ、スタジオ、劇場、出版社、新聞社などの伝統的エンターテイメントは、考え方の根本的切り替えが必要だ。社会をアッといわせる斬新なアイデアを発想できなければ、生き残れないのだ。
サンパウロ市内のF1レースは、参加料金だけで年間七十万ドルのビジネス。また販売促進イベントも、米国では二千億ドルビジネスと有望産業になった。ブラジルでもハシリが始まった。コカコーラがヴィベ・ゾネに、スコールがスコールビーツに、TIMがTIM音楽祭のコンサートを立ち上げた。
ブラジルの娯楽産業の年間売り上げは、五十億ドルといわれる。まだエンターテイメントのはしりに過ぎない。しかし、インターネットやラジオ、テレビ、雑誌、書籍、ケーブルテレビなどの媒介メディアは完備されている。政府も予算を計上してエンターテイメント産業を支援している。