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廃液処理システムでも定評=岡田茂吉財団=ミナス州河川汚染解決へ

4月9日(土)

 流域民五十万人以上に甚大な被害をもたらしたといわれ、ブラジル最悪の河川公害事件に発展したミナス州カタグアゼス市の製紙工場廃水の流出から、ちょうど二年。この深刻な問題を解決するため、微生物を使った自然な廃液処理システムで定評のあるブラジル岡田茂吉財団(FMO)が選ばれ、二月十一日に同製紙会社と正式な契約を結んだ。EM菌などを使って廃液を無毒化し、近隣のユーカリ林に散布することで土壌改良にもなる一石二鳥のプロジェクトで、国内で同様の問題を抱える諸地域から注目を浴びている。
 「ある朝起きたら上水をとる川が突然、死の川に変貌していた。これでいいのか」。事件当時、壊滅的な被害を受けたパライバ・ド・スール川下流に位置するリオ州のロジンニャ知事は、発生源であるミナス州を公式にそう非難した。
 〇三年三月末、カタグアゼス製紙工場がパルプ製造時に出る廃液を約二十年間貯めていた溜池の堤防が決壊してポンバ川に流れ込み、さらにリオ州へ続く本流のパライバ・ド・スール川へ流出した。
 大量の魚が浮かび、流域に生息するサギ、ワニ、カピバラまでが川辺に累々と死骸をさらした。一夜にして異様に黒ずみ、大量の泡を浮かべて流れる川面を見て市民は愕然としたという。
 発生源であるミナス州はもとより、下流のリオ州でも流域の七郡で上水が使えなくなり、五十万人以上が被害を受けた。海水浴場二十一カ所で禁止処置がとられ、さらに養殖を含めた漁業関係者は壊滅的な損害をこうむり、過去最悪の河川公害事件となった。
 事件を重く見た連邦検察庁では、汚染源の溜池に残された約半分の廃液を浄化するためのプロジェクトを公募し、昨年五月、同財団を含めた数社が申し込んだ。その時は別の企業が四千万レアルで入札したが、諸問題が解決しきれず、結局は撤退。困った検察庁は再び同財団に打診、実現可能性の証明を求めた。同財団はサンパウロ州立大学(UNESP)の研究所と共同研究の形で処理能力を立証、昨年十二月にこのプロジェクトへの検察庁許可が下り、二月十一日に同製紙会社と正式契約を結んだ。
 同財団主任研究員の太田裕司さん(39、岐阜県)は、「まずは一年間かけて廃液の生物性を活性化させ無毒化し、自然が吸収できる形にします。その後、溜池のまわり二百ヘクタールにあるユーカリ林に肥料として徐々に撒きます。汚水処理と土壌改良の二役を担うわけです」と説明した。
 これはFMOシステムとよばれる廃液処理工程で、化学物質を投入せず、EM菌などの微生物を使って環境を浄化する仕組み。もともとは同財団の日本本部が開発したもので、ブラジル国内二十五カ所の工場や施設でもすでに実際に使われている。
 最初に現場の汚染状況を科学的に分析し、最も適当な微生物の組合せや配分、投入量、装置などをパッケージとして個別に提案する。すでに一日十五万羽の鶏を解体する工場や、数万リットルの廃液を出す工場でも処理する実績を持つ。企業ではないため「見積りは実費に近いもの」という。
 同財団の副会長、大野正人さん(58、香川県)は、「どんな工場にも多かれ少なかれ問題はある。環境当局も失業問題があるために現状では強気の取り組みはできないが、財団の提唱する『自然に優しいあり方』はいずれ注目されるはずです。環境保全は、一般市民の生活習慣や教育にも関わる大きな問題。根気強く、理解を広げる活動をしていきたい」と語った。
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 ブラジル岡田茂吉財団(ロジェーリオ・ヘチマネッキ会長)は、文化・教育・社会福祉活動を中心に、自然農法普及や研究を目的ために七一年に設立。設立主体であるブラジル世界救世教は国内に四十万人近いメンバーを有し、財団の活動を支えている。