4月13日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙一日】サンパウロ大学(USP)経済学部のサワヤ・ジャンク教授は、二十一世紀における米国の覇権主義という暴れ馬の手綱が取れるのは、ブラジルをおいて他にないと訴えた。伯米両国の間にある実力の差は、時間が解決すると同教授はいう。
米国で世界の農業生産者と農業技術者を招き、米国の政策と方針を提示するための農業フォーラムが開催された。目的は米国を世界最大のコモディティ(一次産品)生産国として紹介することである。多分にライバルであるブラジルを意識してのデモンストレーションだ。
まず参加者の目についたのが、強敵ブラジルのハイテク農業に対する恐怖心に裏打ちされた米国の焦りだった。途上国ブラジルに遅れを取った米国農業が、アグリビジネスでもがく姿でもあった。
フォーラムでは、コモディティの需要が来る十年間にアジア地域を中心とする途上国の経済成長で、急激に増加するとの予想で話題は持ちきりだった。もう一つの話題は、コモディティの生産がアグリビジネスに不案内な低開発国の主要生産物であることだ。
これまでの主要生産国ブラジルのライバル国は、米国とフランス、オランダ、カナダ、オーストラリア、ニュージランド。そして途上国ではメキシコ、タイ、マレーシア、チリーなど。低開発国は農業技術の初期段階にあり、投資も始まっていない。
農業の展望に関する報告が、緑の革命でお馴染みのノーマン・ボルロッグ博士によって行われた。同博士による構想の柱は、遺伝子組み替えとかんがい、土壌改良、機械化農業だった。そこで全参加者に紹介したのが、ブラジルのハイテク農業だった。ブラジルが開発した数々の農業先端技術は出席者の度肝を抜いた。博士は南半球の各国への投資を促した。
博士は個人的には、アフリカを二十一世紀のバイオテクノロジー大国にすることを勧めた。農業のハイテク化が動植物の生態系を保護し、人類に豊かな恵みをもたらすと訴えた。ブラジルのセラード開発は、塩基質の不毛の地を緑の沃野に蘇らせ、世界に手本を示したと絶賛した。
二〇〇五年の国際食糧市場は悲喜こもごものニュースが待っている。自然の法則ともいえる需給法則は、〇五年にジェットコースターのように市場を揺さぶる。もう一つはサンペドロ(雨の神様)の影響で大豆やとうもろこし、小麦、米、綿が豊作貧乏で泣かされた。一方、砂糖やコーヒー、肉、乳製品はいい年だった。
〇五年アグリビジネスの展望は、新しい問題を提起した。衛生や滋養、品質、環境、産地証明、バイオエネルギー、バイオテクノロジー、研究機関、知的所有権など。
ブラジルが注意すべきは、アグリビジネス派と小農派が二省庁にまたがって予算獲得競争をやっていることだ。ブラジルが戦うべき敵は米国の補助金制度ではなく、大豆のサビ病やBSE、アフトーザ(口蹄疫)、鳥インフルエンザ、かんきつ類の立ち枯れ病などで、両国が資金協力し取り組むべきだ。
グロバリゼーションに伴い、衛生問題や各国の利害が表面化した。また米国の農業政策は世界に失望感をあたえ、米国は〇八年までに解決案を見出すから時間をくれと呼びかけた。
米国内には財政赤字の是正を訴える官僚と、議会に圧力を掛ける絶大なロビー勢力のジレンマがある。しかし、こんな米国のわがままがいつまでも通用するわけではない。
世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドが農産物補助金問題を解決できないなら、WTO自身が崩壊することになりかねない。米国のわがままに歯止めがかからないなら、世界的な混乱の新しい原因となる。