4月26日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】サンパウロ州工業連盟(FIESP)のルーベンス・バルボーザ貿易部長は二十三日、最大輸入国の米国に対する通商拡大の熱意が欠けると政府に圧力をかけた。ルーラ大統領は既に四十カ国を訪問し通商使節団を随行したが、二〇〇五年に訪米計画は全くない。米国はブラジル製品の最上顧客であり、米国市場抜きの通商政策は無意味であると苦言を呈した。ブラジルは途上国へ気を散らすあまり、最重要市場への注意を怠ったと批判した。
産業界は、PT政権の通商政策に不満を訴えた。ルーラ大統領は政権就任早々、未知数の途上国市場へ力を入れる余り、既得の米大市場を軽視していると訴えた。アフリカとベネズエラには三回、リビアやシリア、キューバには経済使節団を随行した。然るに米国へ経済使節団を引率する計画は、これまでのところ全くない。
大統領は、三回訪米した。国連本会議出席で二回、投資要請では一回に過ぎない。米国は、ブラジルにとって最優先、最重要市場なのだ。年間一兆五〇〇〇億ドルを輸入する米国を軽視する通商政策は、愚の骨頂だと、元駐米伯大使のバルボーザ部長は政府関係者に警告した。
米国の総輸入に占めるブラジルの輸出は、わずか一・三%と少な過ぎる。アフリカや中近東も将来は有望な市場であるが、米市場を犠牲にするのは無謀だ。中国経済の台頭は、根底に対米輸出のための投資があるとした。
ブラジルの対米輸出は八五年、七〇億ドルだった。中国は三五億ドルに過ぎなかった。ブラジルの対米輸出は〇四年に二〇〇億ドル。それに対し中国は千七〇〇億ドル。この数字は何を語るかと同部長は訴えた。
FIESPはブラジルの対米輸出が米国東部に集中し、西部を見落としていると指摘した。ブラジルはまだ対米前線を放棄してはならないとした。米国市場は、ブラジル製加工品をまだまだ受け入れる、奥行きの深い市場だという。
ブラジル政府は米州自由貿易圏(FTAA)交渉で座礁し、通商交渉の案件から取り下げた。FTAAの米代表も、ブラジルから引き上げた。米政府はFTAA本部をマイアミに設置することで、ウルグアイを含め域内で大部分の国の合意を得た。南米の雄ブラジルに米政府は期待を寄せていないようだ。FTAAマイアミ本部は、ブラジル抜きで発足する運びとなった。
ブラジルはFTAAで孤立し打開策が見い出せない中、FTAAマイアミ本部がジョゼ・ジルセウ官房長官をマイアミへ招いた。ブラジル政府はマイアミ招待について公式見解を表明していない。ブラジルとフロリダ州との間で、単独の通商関係が結ばれるらしい。同様のケースが、ブラジルとカリフォルニア州の間でも進行しているようだ。
全国工業連盟(CNI)は米国向け大型経済使節団の結成で、傘下加盟企業に打診を始めた。随行団員は、米国市場の穴場を発見したい考えだ。これまで米国の零細小企業とブラジル企業の折衝はなく、盲点となっていた。また大・中企業との取引メカニズムも欠落していた。巨大な米国市場へ積極的に参加するための市場調査への投資も、ブラジルには欠けていた。