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世代超え受け継がれ=石川県人会館=開館10周年祝う=谷本知事ら慶祝団迎え

4月26日(火)

 「この会館が完成した時、当時の中西会長が言った言葉『石川県の四十二番目の市町村がブラジルの地に今、誕生しました』が記憶に残っています」――。二十四日午前十時から開催された、ブラジル石川県人会館(パライゾ区)の開館十周年記念式典で、母県の谷本正憲知事は感慨深げに振り返った。日本からは知事夫妻ら十七人の慶祝南米訪問団に加え、約百五十人の会員が出席し、盛大に節目の日を祝った。この二月に就任したばかりの同会初の二世会長、小堀勇ジェラウドさん(50)にとっても、世代交代をアピールする絶好の機会となった。
 開会の挨拶で、小堀会長は「落成式の時の、中西会長の嬉し涙を今も忘れる事はできません」と前置きし、会館を活動拠点として使うおかげで「石川の文化が二世、三世に受け継がれており〃石川県人ここにあり〃と言ってもいいぐらいです」と喜びの報告した。
 会館建設にも全面的協力していた谷本知事は、「会館で行われている文化祭では、会員のみなさまが熱心に活動に取組んでおられる姿を見ました。遠く離れたこの地で、世代を超えて脈々と受け継がれている様子を拝見し、感極まりない思いがしております」との言葉を贈った。
 続いて、米田義三県議会議長は「一世が新世代を指導し、二世、三世を日伯交流の担い手として育てるためにこの会館を有効に利用して欲しい」と語った。
 そして石田仁宏サンパウロ総領事、高橋一水県連会長代理は三年後に控えた移民百周年に触れ、母県からの協力を訴えた。
 谷口知事からは記念品として、プロジェクター、DVDプレイヤー、スクリーンなど視聴覚機材一式が送られ、司会を務めた竹下康義前会長は「今後これを使って、石川県の観光や物産を紹介する催しを毎月するよう検討する」と応えた。
 谷本知事から、中西元会長には特別功労者表彰が、竹下前会長には功労者表彰として感謝状と記念品が手渡された。続いて、高齢者感謝状が贈られ、七十六人を代表して丸十賢一郎さん(82)が受け取り、「みなさん長生きして次の式典にも出て欲しい」と語った。
 母県からの激励金が、知事の手から県連の高橋会長代理、文協の上原幸啓会長、援協の酒井清一会長に渡された。
 最後に、新宅剛観光交流局長が県勢概要を説明。四十一市町村あったが現在は二十二市町に、来年二月までには十九になる。映像を使って石川サイエンスパークや伝統芸能、豊かな自然を解説し、県人会員は懐かしいふるさとの現在の姿に見入った。
 午後十一時半からは研修生や留学生のOBとの懇談会。昼食前には同会館で行われている詩吟教室生徒六人に、加賀宝生流の北村修吉師範が加わり、見事な「鶴亀」を披露。昼食後にはサンバショーも行われた。
 今回、県人会から「母県を知らない三~四世には、まず日本の原風景が残る石川を体験させたい」という希望があり、谷本知事は〇六年度から南米県人会員の子弟である高校生らを受け入れる一方、県内の高校生や大学生を南米に派遣する「石川県・南米日系青少年交流事業」(仮称)を創設することを明らかにした。
 県は従来から、県人会からの子弟留学受け入れ事業を行っているが、一年間の語学留学生一人を受け入れるだけだった。
 有力地元紙「北國新聞社」も記者を派遣し、二十五日付けで「石川の血忘れずに」との見出しで大きく報じた。本文中には「開館十周年の式典は、若い力がブラジル日系社会で生きる石川の血を引き継ぐセレモニーでもあった」と総括するなど、母県からの注目度の高さと期待の大きさを感じさせた。