4月27日(水)
ビジネス機会や食品関係など、昨年三月から今年三月にかけて、計三十五回のセミナーを実施したジェトロ・サンパウロ・センター(桜井悌司所長)。「通商弘報」に記載されるブラジル関連の情報も、この一年半に二割増加した。桜井所長は、ジェトロに入って三十八年。メキシコやチリ、イタリアなど海外赴任や輸出入・貿易実務の経験を生かして、日伯経済促進に知恵を絞っている。ルーラ訪日を前に、ざっくばらんに話を聞いた。
「ブラジルに外国人観光客を誘致するには」。桜井所長がこの四月に書き上げた、A4版で二十三枚にわたる力作だ。観光産業に成功している国々を引きながら、ブラジルの問題点を指摘。十一の提言をまとめた。
昨年四月、「ブラジルに外国資本をいかに誘致するか」を執筆。「ここで、何か役に立ちたい」と意気込む。
「観光分野は比較的、手がつけやすい」と桜井所長。ブラジルはその資源が豊富だが、外国から年間、観光客が四百万人しか訪れないのはもったいない。日本人は、年間千六百万~千七百万人が海外旅行に出掛ける。来伯者は、わずか四万人。全体の〇・二%にすぎない。
同所長は「観光振興十カ年計画を立て、政権が変わっても継続してインフラなどを整備していくべき」と論じる。「外国資本の誘致が何としても必要だという、あらゆるレベルでのコンセンサスが形成されてほしい」とも。
リピーターを増やすには、フェスタ・ボンフィン(サルバドール)、シリオ・デ・ナザレー(ベレーン)など地方の祭りを盛んにすることも欠かせない。また、ドウバイの「E─CARD」のように、空港の出入国業務の簡素化も求められるという。
ルーラ大統領の訪日について、エタノールと牛肉の対日輸出に具体的な成果が出てほしいところだ。「大きなミッションを一回出すより、小規模なものを数多く派遣するほうが、効果が大きい」と見解を示した。
大統領の外遊は、訪問先の注目を集めるには絶好の手段。しかし大統領ばかりが目立って、掘り下げた議論にならない恐れもあるというのだ。
日本の経済界にとって、ブラジルは知名度が高いわけでないので、十分にアプレゼンテーションする必要があるということ。ブラジル側に、活発な情報発信を促す。皮肉にも、中国の反日デモが日伯関係には、プラスに働くかもしれない。
昨年の小泉首相の来伯を機に、日本の商社マンが市場調査などのため頻繁にくるようになった。〇六年から数字に表れてくると、桜井所長はみる。
「中国一辺倒ではダメ。プラス1が必要。ブラジルは昔のような悪性インフレも収まり、マクロ経済もうまくなっている。そのプラス1の国になる力が、十分にある」。
日系社会は、移民百周年を盛り上げていかなければならない。「コロニアの分裂を避け、日本政府の協力のもとに一丸になって祭典を開いてほしい」と期待感を示す。
カラオケや芸能祭にちょくちょく足を運ぶという桜井所長。コロニアに企業努力が足りないのではないか、と感じている。「日曜日に文協にカラオケを見に行った。ついでに移民史料館を見学しようとしたら、閉館になっていた。七百人が文協にいるのだから、その一割でも訪れれば活性化すると思った」。
また、イタリア商工会議所がサンパウロ四百五十年を記念して実施した、イタリア移民ゆかりの地を訪ねるツアーを参照。「日系でも、農業や美術をテーマにして同様の企画が立てられるはず」と述べた。
最後に、こう提案して話を締めくくった。「どういう分野で日本人が貢献してきたかが分かるような移民史。詳しいデータはなくても、ストーリー性があって、あまり肩がこらないで読めるものがほしいですネ」。