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ライス米国務長官=民主主義確立へ協力求む=ブラジルの指導力に期待=頭痛の種はベネズエラ=FTAAは具体案なし

4月28日(木)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十七日】訪伯中のライス米国務長官は二十六日、南米に生じた一連の政治危機でボリビアやエクアドル、ベネズエラなど政権基盤が不安定な政権への支援は民主主義確立へ向けた政治・経済的課題だとしてブラジルの協力を求めた。ベネズエラについては、アモリン外相の庇護発言に同国務長官が反論し、同国の反米路線を批判した。民主主義は選挙だけでは不十分だとし、現実無視の外観だけを求める同国の安易な民主主義的手法を諌めた。
 ライス米国務長官は、ルーラ大統領やジルセウ官房長官、アモリン外相と会談した。ベネズエラ問題では、チャベス流民主主義を支援する外相と、見せかけの安易な民主主義を批判する同長官の間で不協和音が生じた。
 民主政治は、国民に選挙の機会を与えるだけでは不十分だとした。教育や医療、社会参加のチャンスなどを、国民全員に供与する義務が政府にはあるという。米州機構(OAS)覚書が提示するように、開かれた民主政治をベネズエラに要求すると同長官が強硬に出た。
 南米地域で影響力を増しているブラジル政府に、米政府がベネズエラ問題を懸念していると通告し、二点を指摘した。一つは同長官の着伯前日、官房長官がチャベス大統領と会談したこと。二つ目はニューヨーク・タイムズ紙が同会談は南米の民主主義に心配の種をまくものと報道したこと。同長官は、ブラジルに続いてチリやコロンビア、エルサルバドルをも訪問する。
 同長官と外相は、国連機構の中に民主政治を確立するための基金を設立することで合意した。設立は、ハイチへ平和維持軍を派遣したブラジル政府へ、滞在費負担を約束した国が駐屯費用を滞納し、支障を来したことによる。
 しかし、ブラジルが最も期待する米州自由貿易圏(FTAA)構想については今回、後回しとなった。同長官はFTAAでてこ入れを行うと約束したが、具体案は一切表明しなかった。FTAAは農産物の売り込み合戦ではなく、自由貿易システムの確立が重要であることを認識する必要があるとした。FTAAの目的は経済発展が両国国民の末端まで浸透することで、米国も努力するという。
 ルーラ大統領は、ブッシュ大統領の十一月前の訪伯について同長官と話し合った。ブラジル政府は国連安保理の常任理事国入りで米政府の支持の言質を得ていないから、米大統領来伯の際の支持表明に賭けている。
 米大統領は国連軍のハイチ派遣で、ブラジル政府が快諾したことを評価している。ブラジルは、南米のフィクサーとして手腕を買われたようだ。多民族国家での民主主義培養には、ブラジルやインド、南アフリカなどに米大統領が期待しているという。
 またOASの中でキューバだけが空席であることも、今後の課題として検討することを同長官は約した。ブラジルが多国間外交を展開するアラブ諸国については、米政府はアクション不足を認めた。産油国を除くアラブ二十二カ国は、スペイン並みのGDP(国内総生産)しかないことから、経済改革への米国の協力をルーラ大統領は求めた。