5月4日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】キルチネル亜大統領は二日、ブラジリアで九日に開催予定の南米アラブ首脳会議に欠席する意向を示した。亜外務省は、ブラジルが世界貿易機関(WTO)の役員選出に食指を動かし、さらに国連常任理事国入りや国連食糧農業機関へも意欲を燃やすことで、伯亜両国間に不協和音が生じていることを認めた。亜大統領は、野心満々のブラジルがローマ法王さえブラジルから出そうとする外交戦略を内心よしとしないようだ。
キルチネル亜大統領は大統領候補だった二〇〇三年四月、ブラジリアでルーラ大統領から歓待され、代父関係まで求めた。理想の次期亜大統領としてプラナウト宮は同大統領の手腕に期待した。しかし、両国の蜜月期は四カ月で終わった。プエルト・イグアスのメルコスル首脳会議で亜政府は、セーフガード制度(緊急輸入制限)をブラジル政府へ通達、代表団は冷水を浴びせられる思いがした。
メルコスルのもう一方の柱、亜国はブラジルと歩調が合わないようだ。一日には出席を確認し、二日には欠席と通告してきた。亜市場へ怒涛のごとく押し寄せるブラジル製品の侵略に悩まされ、IMF交渉ではブラジルの援護射撃がなかったことも不満の種となっているようだ。
亜政府は財務次官に就任したムリロ・ポルトガル氏が、国際通貨基金(IMF)で亜政府にとって不都合なことを画策すると憶測している。伯亜両国は今月十六日、亜政府のセーフガード制度に対抗し、ブラジルも亜製品に対するセーフガード制度を設けるかどうか検討する会合を開く。
エクアドル前大統領の亡命では、ブラジルが南米の覇権国家のように振る舞ったと亜国は不快だったらしい。伯亜両国は利益を分け合う同盟国だが、ブラジルは主役で亜国を脇役に利用しているという。付き合っても損するばかりの同盟国だと亜国はみている。ライス米国務長官の南米歴訪で、亜国を素通りしたのも蔑まれたとみたらしい。
WTO専務理事選の支持率調査で、ブラジル推薦のルイス・S・コレイア大使への支援に亜国がソッポを向いていたのは明白。同大使は候補者四人のうち最下位で、ブラジルは赤恥をかき候補を取り下げた。
亜政府が新たに靴の輸入制限を検討していることで、政府は亜国産のワイン、小麦粉、たまねぎ、米の輸入制限を検討している。この「靴紛争」は七月、アスンシオンで開催されるメルコスル首脳会議で、火ぶたが切られそうだ。
ルーラ大統領は亜国の対伯外交硬化について、米国とEUへの依存度を縮小する南米地域統合はブラジルの音頭で仕切る方針に変更はないと述べた。ブラジルがWTOで加工ブロイラーや綿、砂糖で勝訴できたのは、途上国連合支援の結果であると大統領は協調の意義を訴えた。
ブラジルは米国とEUにたてつくつもりはないが、依存はしたくないという。ブラジルは周辺国へ経済支援を行うため、ブラジルを中心とした南米地域統合が必要だとした。アモリン外相によると、伯亜間に起きる誤解は煙のようなもので、時間の経過とともに霧消する類いだという。