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世界に通用しないG20=ブラジル外交の並外れた誤算

5月4日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙四月十九日】世界貿易機関(WTO)の次期専務理事の選挙で、ブラジルが一人浮き足立っていたことに気付き、ブラジル外交の馬脚を現した。候補者四人のうち、ブラジルのルイス・F・コレイア氏が最下位の支持率で低迷していることを知った外務省は、同氏の候補を取り下げた。
 外務省は敗因の究明を行った。まず指摘されるのは、先進国の厚い壁を打ち破るためルーラ大統領が組織した、G20が同盟国から冗談半分に受け取られたことだ。労働者党(PT)のイデオロギーは同盟国に理解されなかったようだ。
 マルキシズムの言葉を借りるなら、左翼政権のリーダーシップは一国の経済発展のためのインフラ構築には間に合うが、諸国連合のスーパーストラクチャー構築には無理であることを悟るべきだった。
 ブラジルは国の面積だけが世界十位の大国であるに過ぎない。経済力で見るなら一寸法師だ。世界の貿易額で見るなら十六位、わずか一%にも達していない。それにも関わらず、貧乏国連合軍の司令官気取りになったのだ。
 進撃が無理なくスムースに行くなら、リーダーシップはどうでもよい。途上国が政治取引を望んでいないことは重々承知のはずだ。先進国市場に自国製品が輸出できることだけを途上国は望んでいる。
 例えばメキシコは、米国との歴史的な溝が埋まることはないと知っている。しかし、通商関係はどの政権も大切に守っている。チリのラーゴ社会主義政権は二〇〇二年に米国と自由貿易協定を結び対抗意識はない。ウルグアイ左翼政権は前政権が結んだ米国との投資協定順守を宣言した。
 アルゼンチンが九一年に米国との独自チャンネルを優先する外交政策を宣言したことを知っているだろうか。しかし、イタマラチーの通商戦略は、自己満足で踊りまくるカーニバルのパレードだった。
 フルラン産業開発相は十二日、貿易拡大のためナイジェリアを訪問した。しかし外務省の不手際で、ブラジルについて何も知らないナイジェリア政府の小物が応対し地団駄を踏んだ。今度はジュネーヴで外務省がドジを踏んだ。
 WTO専務理事に選出の見込みが全然ないコレイア氏を推し、外務省は国際オンチをみせ、赤恥をかいた。一方EU推薦でブラジル泣かせのレミー候補は、先進国連合の厚い支持を受けた。並外れたブラジル外交の誤算は何を意味するのか。
 一人よがりのブラジル外交は、途上国からもミソを付けられた。南米のリーダー気取りは、周辺国からも笑いものになった。南米票はウルグアイの候補へ流れ、ブラジルはメルコスルの孤児となった。こんな有様で、ブラジルからローマ法王が出るだろうか。