20世紀は戦争の時代とされるが、確かに2回の世界大戦を始めスペイン内戦や日中戦争など多くの戦いが繰り広げられた事実は否定しえない。なかでも第二次大戦の悪夢はユダヤ人のホロコーストに象徴されるように人間の残虐性を歴史の1頁、1頁に刻み付けた。そんな悲惨な戦争を指揮したヒットラー総統が愛人エヴァ・ブラウンと一緒に自殺したのが1945年4月30日▼遺言で後継者となるデニッツ提督は5月7日に降伏を決定し、9日にはカルテル元帥がベルリン郊外で無条件降伏の文書に署名、ナチ・ドイツの敗戦が決まる。あれから60周年を迎えた昨日の9日―モスクワの赤い広場で世界50数カ国の首脳らが記念の式典を開き「平和」と「秩序」を訴えた意義は大きい。あの年の2月にはヤルタ会談。三月はベルリン陥落、4月28日になるとムッソリーニが愛人ペタッチと銃殺されるなど慌ただしい動きが続く▼あの戦争でヒットラーは、ユダヤ人を600万人も殺害したとされ今に語り継がれる。旧ソ連のスターリングラードの悲劇ではドイツ軍30万人が壊滅。大戦中のドイツ国民の死者は350万人。うち270万人が本国ではなくソ連・仏やアフリカなどの戦線で死を迎えている。戦後、ドイツの大統領は何回となく謝罪の演説をしているが、それほどにあの戦争の傷跡は深く重い▼あのヤルタ会談をジョンソン大統領が批判的に語るなど、ロシアとの対立も露呈しているけれども、今―語るべきは、この地球から戦争を追放するとの21世紀に向けた世界平和論であるべきは言うを待たない。 (遯)
05/5/10