5月12日(木)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十一日】ルーラ大統領が音頭を取り開催された南米アラブ首脳会議は十日、主催国ブラジルの意図に反し、三十四カ国代表が米国とイスラエルの侵略を名指しで非難する共同声明を採択し、発表の方向へ進んだ。アラブ諸国の代表が、南米諸国首脳に招かれた公式の場でイスラエルのパレスチナ侵略を非難するのは初めて。キルチネル亜大統領は、米・イスラエル非難の政治戦略となった同会議場から退場した。
十一日発表の南米アラブ三十四カ国共同声明は、ルーラ大統領の意図に反して、やぶへびとなりそうだ。その一つは、テロ組織を支援しているとしてシリア政府に対して米政府が決定した経済制裁を不当としたこと。米議会が承認した経済制裁は国際法違反であり、国家の独立性をうたった国連憲章の趣旨を損なうものだとした。
米国に対する名指し非難はシリア経済制裁だけだ。しかし、十五ページからなる共同声明文は全体にわたり、米国の覇権外交やパレスチナ問題、先進諸国の途上国泣かせの経済政策を攻撃する内容。他は国連の弱体化や農産物補助金制度、低開発国における医薬品に対する知的所有権などの間接的批判である。
ブラジル政府は中東問題を交渉で解決すべき外交課題として位置付ける努力を行ったが、アラブ諸国の強引な主張に押し切られた。エルサレムに設置された民族隔離の壁は、植民地時代の城壁復活だという。テロの定義については、自国が侵略されたら抵抗するのは当然だとアラブ諸国代表らが主張、結局まとまらなかった。
ブラジルは、同会議の準備不足だったようだ。テロの定義は後日、国連の場で討議することになった。共同声明は、どの条項も誤解を避けるため多数の補足が付き、ブラジルは火中の栗拾いを回避した。
亜代表が最後の土壇場で、フォークランド(マルビナス)問題を共同声明に含めるよう要請した。共同声明では同諸島への侵略を抗議、早期返還を求めた。英大使館は十日、フォークランドは英国の領土と声明を発表し、EU憲法にもEUの域内と記載した。共同声明はEUに対して、フォークランドのEU編入に抗議した。同諸島のEU編入に先立つ亜政府対応の遅れが、亜国内で非難されている。
キルチネル亜大統領は突如会議を退場し、帰国の途に着いた。異例の振る舞いが、関係者を驚かせた。伯亜関係に悪い予感を呼ぶ出来事だった。ビエウサ亜外相は起こるべきことは起きたし、後は今日も明日も分かり切ったことが起きるだけで、退屈と言わんばかりの談話を発表した。チリのラーゴ大統領も、会議閉幕前に帰り支度をした。
亜大統領のメルコスル脱退は、ルーラ大統領の説得で矛を納めたようだ。亜大統領が他人のスネを蹴るのは癖だと側近らはいう。会議の開幕式でも、亜大統領は態度が悪かった。挨拶を短くしてくれといわんばかりのサインだ。アクビをしたり席を抜けて携帯電話を掛けたり、一国の元首にあるまじき行いだった。