5月13日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙四日】長距離トラックの運転手がハードスケジュールから過剰労働を強いられ、健康管理を怠っていることが事故につながっている。そして一般乗用車が事故に巻き込まれて犠牲者が出ていることが社会問題となっており、運送業界の改善が求められている。昨年から輸出が急増したことからサントス港への主要輸送手段としてのトラック陸送も増えている。運転手は出来高払いの成功報酬のため、一日十二時間以上の労働が大部分だ。食事時間も切り詰め、半数は一日一回の食事しか取っていない。また睡魔から逃れるために覚せい剤を使用しながら体を駆使している実態も明らかになった。
サンパウロ市とサントスを結ぶアンシエッタ道とイミグランテス道を運営管理するエコヴィアによると、同道での昨年のトラック事故は二一九二件で〇三年の一五五七件に比し四〇・七%の増加となった。今年三カ月間では五三八件で昨年同時期より八二件多かった。昨年一年間のトラックの交通量は一昨年対比一二・五%増だった。
これについてエコヴィアでは、昨年来からの輸出の急増で、輸出産品の貨物輸送量が急増、それにともない事故も増加したと分析している。運転手は成功報酬で、一回の輸送でいくらと定められている。サンパウロ市ーサントス港間はわずか七〇キロの走行距離のため、運転手は一日に何往復もして、収入増を図っている。また運送会社も請け負った輸送品を船積に間に合わせるために、それを奨励している。
エコヴィアでは四月五日から八日までに、同道を職場とする運転手の七八%に相当する六百三十人の実態調査を行った。この期間が保健衛生週間に当たったこともあり、メトジスタ大学の医療研究グループの協力を得て運転手らの血糖値、コレステロール、血圧の検査も行った。事故の最大原因となる運転手らの体調を把握するのが狙いだった。
この結果、驚くべき事実が明らかになった。六七・七%が一日十二時間以上働き、五四%が睡眠時間六時間以下だった。さらに一三・五%が眠くならないように覚せい剤を服用していた。また四%が飲酒運転していることを告白した。
労働時間が長いため、食事時間を切り詰めている運転手も多い。約半数が昼食を遅らせて夕食と兼ねているため、一日一回の食事で済ませている。このため血糖値が極端に低いのと高いのとに分かれている。健康体の平常値が七〇から九九MGに対し、三六MGという糖分不足のケースもあった。これは目まいや疲労の原因となり事故に直結する。また大半が血糖値が高く、中には四六五MGと完全な糖尿病と診断された人もいた。
覚せい剤は医師の処方の下での販売と薬事法で規制されているが、容易に手に入るという。特定の薬局や道路沿いのガソリンポストでは二十錠入り一〇レアルで売っている。パラナ州では五十錠入りで一〇レアル。これを一日三、四錠服用するという。
パラナの運送会社の中には無料で覚せい剤を配布して労働時間を延長させているところもある。この運送会社に長年勤めていた運転手はこの程、辞表を出した。一日十二時間から十三時間働いていたのを会社側が覚せい剤を使用してさらに労働時間の延長を強要したため。この運転手は覚せい剤を使用していないばかりか、同僚が服用し過ぎて心臓発作で死亡したことが頭に焼きついて離れないという。
ゴイアス州からサントス港まで二両編成の積荷を輸送している四十一歳の運転手は典型的な過労だ。積荷の受け渡し時間の都合で一日三時間から四時間の睡眠で走り続けるという。労働時間は十六時間から十七時間に及び食事も満足に取らず、もちろん覚せい剤を服用しながら、ただひたすらに走る。これで一カ月の収入は一五〇〇レアルとなる。
サントス海岸は観光、行楽の一大スポットとなっており、連休になるとアンシエッタ、イミグランテスの両道は行楽で百万台以上の車が利用する。トラックの無謀運転の犠牲になったり、巻き添えとなる一般乗用車も今後増加すると見て、エコヴィアでは運送会社の体質改善と、運転手の健康管理も含む事故防止を呼びかける運動を展開していく方針を示した。