5月17日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五、十六日】インフレ抑制が優先か、経済成長が重要か―。今日と明日にかけて開かれる月例の通貨政策委員会(COPM)は厳しい選択を迫られている。九人から成るメンバーはこれまで中銀主導のインフレ抑制優先を支持して、八カ月間連続で基本金利(SELIC)を引き上げてきたが、財界や政府内の批判が強まる中、経済成長優先の動きも出ている。これにより金利引き上げの青信号が黄色に点灯しはじめ、明日の同委員会の決定が注目されている。
インフレ指標とされている広範囲消費者物価指数(IPCA)が四月に〇・八七%へとはね上がり、今年四カ月間のインフレは二・六%と、今年の政府目標の五・一%を半分以上超えた。これを受けて金融界では、今回もCOPOMは基本金利をさらに〇・二五%引き上げ、年利一九・七五%にするとの見方が強い。
しかし、いっぽうで財界や政府内での反発を受けて、金利引き上げに反対の旗を上げているメンバーもおり、同委員会はこれまでと打って変って意見が二分されている。メンバーの代表的存在であるパロッシ財務相もこのうちの一人だ。ルーラ大統領が金利引き上げは失政の一つだと言明しているし、アレンカール副大統領も経済成長の足を引っ張る元凶だと痛烈に批判している。昨年度のブラジルの経済成長率は五・二%とめざましいものだったが、今年の予測は三・五%とされている。
しかし基本金利が昨年九月の一六%から先月の一九・五%まで一気に引き上げられたことで、今年の成長率は三%を割り、二%に近い数字まで落ち込むとの見方も出ている。これらを踏まえてパロッシ財務相はポルトガル新長官をトップにスタッフを刷新した。新スタッフはインフレの最大要因となっている政府支出に対する緊縮財政を金利以外でのインフレ抑制を模索することを至上命令として十六日から行動を開始した。
金融アナリストらは、そもそも中銀が政府目標のインフレ率五・一%に固執しているのが間違いだと指摘、経済成長に伴ってインフレが上昇するのは当然だとしている。また政府目標を打ち出す通貨審議会(CMN)が財務相、企画相、中銀総裁の三人のみで構成されているのが問題だとした上で、広い分野からメンバーを集めるべきだと主張している。
またブラジルは三十年間に及ぶ長い期間インフレという怪獣に苦しめられてきており、容易に退治できないとしている。これまで八六年のクルザード・プラン、八七年のブレセル・プラン、八九年のヴェロン・プラン、九〇年のコロル一次プラン、九一年の二次プラン、九四年のレアル・プランでいずれも一時的に怪獣を退治したかに見えたが、不死鳥の如くいつの間にか復活するのが実状だ。