三年前本紙に連載された山里アウグストさんの小説『七人の出稼ぎ』が単行本になり、さきごろ出版記念会が行われた。コロニアの文学愛好者、山里さんの両親と同県の沖縄県人、団体関係者ら約二百人が文協ビル貴賓室に集まり、山里さんの快挙を祝った▼まったくキャラクターの異なる、ブラジルでの出自がばらばらな、高学歴の男女七人が同じ便で日本に就労に出掛けた、と物語を設定。それぞれが日本とどう出会い、感じ、考え、またいかに行動したかを丹念に追って、人間の生き方を追求した長編小説である▼連載中も、終了後も「単行本になるのか」「なるとすれば、いつ?」といった問い合わせが多かった。新聞の読者は、毎日読むのを楽しみにしていたと思う▼一冊分書かれていたものを連載したのではなかった。十回分(十日分)くらいずつ原稿を届けていただいた。校正の時間も割かなければならなかったので、遅れは許されなかった。だから、催促もした▼八十歳の山里さんにとって、きつい作業だったに違いない。奥さんは、身体を案じて、もうやめなさい、といいながら支えた、と聞いた▼それにしても、高齢ながらすごいエネルギーだった。長編に挑んで書こうとする「気持のエネルギー」である。比較的若いときから、長編は書いていた。その意欲が衰えていないのである。もう一つ、独習のバイリンガルの才能。新聞連載を書きながら、黙々と『OS 7DEKASSEGUIS』を綴っていた。こういう人は希有だ。(神)
05/5/20