5月24日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】中国からの輸入品に対するバッシングが表面化した。政府は国内工業界からの強い圧力の下、中国製輸入品に対して関税引き上げないし輸入枠設定の措置を講じるセーフティ・ガードの実施を決定した。
実施に当っては、工業部門や金融部門などの民間企業から、輸入品による実損の証明を添えた提訴が第一条件で、それを関係省が検討して措置を講じ、大統領が裁可するプロセスとなる。中国の国内総生産(GDP)の急成長により、中国からの世界各国への輸出は目ざましく、国内産業への脅威となっている。
これに対し、アメリカやEU、アルゼンチンがセーフティ・ガードを宣言している。アメリカではすでに繊維部門で関税引き上げを実施した。ブラジルは遅らばせながらの対応となったが、アモリン外相は「これ以上黙視はできない」とした上で、通商と外交は切り離すべきで、この措置により両国の外交がこじれることはないとの見解を示した。
今年一月から四月までで輸入全体は二一%増加したが、国別では中国が五八%の高い伸びとなった。とくに衣料品は一四八%、繊維原糸や織布は一七〇%、靴類は一六〇―一八〇%の伸びとなり、国内産業に深刻な打撃を与えている。
いっぽうでこの期間、ブラジルからの中国への輸出はわずか三・九%の伸びにとどまっている。対中国の貿易黒字は年々減少しており、二〇〇三年が二三億八五〇〇万ドルだったのが、〇四年には一七億三〇〇〇万ドルと二七・五%の落ち込みとなった。さらに今年はこれが八億ドルどまりとなり、五四%の減少となると予測されている。
これらはあくまでも両国の統計に基づく数字だが、実態はさらに深刻だ。貿易局によると、中国からの繊維製品と衣料品の輸出について中国側では四億六一四〇万ドルと発表しているのに対し、ブラジルの通関統計では二億五一一〇万ドルしか現れていない。残り二億一〇三〇万ドルは密輸あるいはアンダーインボイス(実際の貨物の金額より低く書類を作成し税金の削減を図る)されたものとみている。
それでなくても中国製品は低コスト、低金利、外国為替の固定相場制、政府の輸出奨励補助金の後押しを受けて安価となっており、さらに密輸品の安値に直面して国内産業はお手上げの状態となっている。
これを受けて労働者党(PT)のメルカダンテ上院国対委員長は国税庁管轄の税関に対し、中国からの輸入コンテナーを全て開けて中身をしらみつぶしに調べるよう提案した。さらに衣料品には商札をつけることを義務づけ、詳細をパッキングリストに記載するべきだと進言している。また税関リストによると、手術用の縫糸が向う五年間のブラジルの輸出を上回った数が輸入されたことになっているが、これは表向きの申告で中身は違うものではないかと指摘している。
工業界では、中国はアジアで日本、韓国と競合し、EUや米国に侵犯するも反発されたことから、中南米に標的を向けてきたと受け止めている。このためブラジル政府の対応は遅すぎたとしながらも、「手遅れになる前の措置」との見方を示している。