5月25日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】ルーラ大統領に随行した経済ミッションの一人、アオキ・チエコ氏はブラジル観光業界の代表として、日本人観光客の誘致に奮闘している。今回の経済ミッションでは、日本への新規進出を目指す事業家に日本経済のガイド役を務める。東洋には、西洋人には理解し難い特殊な習慣がある。ブラジルで間違って理解されているものもある。東洋人を喜ばせる流儀も、ブラジル人はほとんど分かっていない。これらの疑問を同氏に語ってもらった。
【日本人の関心を引くものは何か】今回の訪日はビジネス旅行で、サービス産業の売り込みが目的。観光業の場合、外国旅行などの際に何を望むかが課題である。これまでブラジル観光といえば、リオやサルバドール、アマゾンが通り相場だった。
これからは、サンパウロの再発見が必要。通常は果物コースや農業コースなど。日本人は、風光明媚で空気がきれいなアチバイア市に注目している。また一日収穫体験や農作業などの農場訪問も目玉となる。収穫した作物を料理して食べ、欲しいだけ持ち帰れることも日本人観光客を喜ばす方法といえる。
【日本とブラジルの相違点は何か】ブラジルの無秩序とおおらかさをブラジル人は無視し、何の価値も認めない。しかし、おおらかさには人間的心の豊かさがある。無秩序は外国人をくつろがせる。
日本では高齢化社会が有望なマーケットとして注目されている。日本からブラジル移住を希望する高齢者は多い。そのため市場調査でひんぱんに来伯する業者も多い。気候は温暖で最適、食物はバラエティに富み量は豊富。生活費は安く、人々は誰にも愛想がよい。千客万来社会だ。
高齢者移住を仲介する専門の旅行代理店と、高齢者が生活するためのインフラ整備が求められている。米国から来た日本人の板前は、米国で高給を取っていたにもかかわらず、ブラジル人は心がオープンであると満足し永住を決意した。
ブラジル人は、ブラジルの素晴らしい特長を見落としている。そこに思いがけない価値があることを忘れている。無秩序とおおらかさをブラジルの宝として、常識を超えない範囲でプロとしてのプラスアルファーを加え、活用すべきだ。
【ブラジルの将来について】私たちは、ブラジルの無形の資源を見落としている。まずチャンスがたくさんあるのに、利用していない。南米は将来有望であるリゾート産業の処女地だ。
【ブラジルが観光地として不足するものは】インフラへの投資が不足している。ブラジルの自然は世界でも珍しい観光名所となりうるが、現在、探検家だけしかやって来ない。健康で忍耐強いプロの観光案内人も、養成する必要がある。
ルーラ政権はよく頑張っているが、朝令暮改の政策には待っていられない。大統領は外遊に観光相を毎回同行し、観光産業を開くこと。後は閣僚が道をつける。今年フランスでブラジル・キャンペーンが、続いてオーストラリア、シンガポールでも行われた。こうした行事は、積極的に続けるべきである。
観光地として理想的でも、資金不足のため地元は何もしない。観光省だけに期待したら、何も計画は進まない。特にセアラー州やバイア州は地元の資本家に呼びかけ、観光資源の発掘に努めるべきだ。
【成功の秘訣をひとこと】いつも満足していること。ユーモアを絶やさないこと。