5月25日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】ブラジル人は、ルーラ大統領の訪日をどう見ているのか。伯字紙の論評では、世界第二の経済大国日本への期待は貿易と投資の拡大であって、大統領得意の地政学講義はないという。
日本はブラジルが最も期待する投資計画のパートナーだったが、過去二十年間、日本の対伯投資は後退の一途をたどっている。しかし、通商面での日本の存在は大きい。
日本は二〇〇四年、ブラジルから二七億七〇〇〇万ドル分のブラジル産品を輸入した。〇五年一月から四月までに、一〇億二〇〇〇万ドルを輸入した。アジアでは、中国に次ぐ重要な顧客である。中国は四月までに一六億三〇〇〇万ドル分を輸入した。
ブラジルからの日本の輸入は原料と中間財に集中している。今回の訪日目的は、それを多種品目へ広げること。さらに反日デモのない親密な日伯関係から、リスク分散のために積極的な対伯投資を期待している。
大統領一行は本音をいうなら、日墨通商協定並みの日伯自由貿易協定の可能性を打診するはずだ。北米自由貿易連合(NAFTA)をモデルにした日墨協定と同様の協定を日伯間に締結したいと考えている。それは画期的であるが、容易でないことも重々承知だ。
恐らく日本側の南米に対する要求には、数々の難問がある。日墨間のサービス基準ではNAFTA基準を採り、世界貿易機関(WTO)基準を採らなかった。ブラジルはNAFTA基準の拒否ばかりでなく、メキシコが容認した砂糖や植物油、肉、繊維、靴などの輸出規制にも反対である。
韓国はブラジルから一四億三〇〇〇万ドル分を輸入し、ブラジルとの門戸を開こうとする意志がわずかだが伺える。日伯間は通商面で大きな進展の余地はないようだ。これまでの経緯から、対伯投資は新しい分野への投資を説得する必要がある。
対アジア経済パートナーシップは消極的で、ブラジル側の努力不足が痛感される。日本は対伯投資にやぶさかではないが、日本語に流暢なブラジル大使の派遣を要請しても、伯政府は全く耳を貸さない。
ブラジルは中東諸国との接近よりも、日本を中心とするダイナミックなアジア通商外交を緊急課題として優先すべきだ。米国やカナダ、メキシコは、既に緊密な対アジア通商関係を結んで着々と発展している。
PT外交特有のイデオロギーの押し売りは、幻想だからやめるべきだ。欧米流のほうが現実的といえそうだ。中国は繊維問題についてWTOでEUと争うらしい。中国の現実的経済政策と為替政策のお手並みも拝見させてもらおうではないか。